米国株市場についてのモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスの見方。
底を打ったとの見方がある一方で、短期的には本格回復は望みにくいといったニュアンスが感じ取れる。
端的に言うと、S&P 500が5,500近辺まで下げたことで、最も売られた低クォリティ・高ベータ銘柄の主導する、トレード可能な株価上昇を生み出すとの考えを支持する。
その上昇は金曜日に始まったようだ。
モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏が自社ポッドキャストで、米市場がいったん14日に底を打ったとの見方を示した。
ここからの反騰は、これまで最も下げてきた、低クォリティ・高ベータの銘柄が主導するという。
この言い方から明らかなように、ウィルソン氏が予想しているのは自律反発的なものだろう。
では、その自律反発は持続的なものになるのか。
同氏の答は「おそらくNo」というものだ。
ウィルソン氏は、最近の下落で市場のテクニカル面が悪化し、回復する場合でも時間を要すると書いている。
さらに上昇が持続するためにはファンダメンタルズ、とりわけ企業利益の改善も必要になるという。
「季節的な強さや業績予想修正の安定が見られるかもしれないが、この要因が上昇トレンドに回帰するには数四半期かかると考えている。
・・・減税、規制緩和、クラウディングアウト縮小、金利低下などの経済成長にプラスとなる政策変更は追って年後半にやってくる可能性があるが、今はそれらを織り込むには早すぎる。」
ウィルソン氏は、トランプ政権が市場にプットを与える可能性は小さいとするものの、FRBプットは十分ありうると考えている。
しかし、FRBプットが発動されるには、経済成長・雇用・資金調達市場の悪化が前提となるため、株式市場にプラスとは受け取れないという。
ゴールドマン・サックスのデービッド・コスティン氏はBloombergで、今年の米国株の下落傾向がマグニフィセント7中心に起こっていると指摘した。
「不幸なことにポートフォリオ運用者から見れば(Mag7は)マレフィセント(有害な)7になっている。
これら銘柄が今年の史上では苦痛の源泉になっている。
これらは年初来で12%低下しているが、それを除く市場は上昇している。
493銘柄は年初来で1%上昇している。」
コスティン氏は、Mag7が調整に入った一方で相場の厚みは予想通り増していると説明している。
同氏はいくつかのセクターに注目している。
- 注目セクター: ヘルスケア、ディフェンシブ。
- AI関連: チップ(NVIDIA)からインフラ、さらにソフトへと関心が変化している。
ゴールドマン・サックスは今月11日、S&P 500の年末目標株価を6,500から6,200に下方修正する一方、欧州株の見通しを引き上げた。
コスティン氏は、それでも長い目でも見て米国例外主義は生きていると主張している。
「過去10年を例にとると、米企業はキャッシュフローの約40%を事業に再投資した。
外国市場では約25%だ。・・・
これこそ長期的な視点で米国株がアウトパフォームを続ける可能性が高いと見る要因だ。
過去50年(再投資が)すばらしいパフォーマンスの源泉となったことは間違いない。」
米企業の再投資の多さは、裏返すなら米企業が成長機会をより多く見出だしている、あるいは強いアニマルスピリットを有していることを指しているのだろう。
そして、再投資しなかった分はB/Sに抱え込まずいったん投資家に還元することも好循環を生んでいるものと見られる。