投資

ハワード・マークス リスクは定量可能か:ハワード・マークス
2024年9月17日

ファイナンス理論の側から読み解くなら、一般的な銀行員やマークス氏の言う《リスク》つまり下方リスクとは、ファイナンス理論におけるリスクとリターンの両方を指しているのだ。
下方リスクにより
 ブレが生じる部分はリスク
 期待リターンが下がる部分は(負の)リターン
なのである。


筆者は、米国でファイナンス理論を学ぶ機会に恵まれ、商業銀行から投資銀行に移った。
この時、リスクは下方だけでなくなり、上方にも開けることとなった。
(実をいうと、貸出にも上昇リスクはあり、その幅がかなり狭いだけの違いである。
シニア・ローンのペイオフの分布は通常、上方に大きく偏っている。)

とにかく、ようやく理論どおりの会話ができるようになったのだ。

昨今の投資ブームで、投資家の中にはリスクという言葉に大きく2つの類型があることを知らない人も多いだろう。
そういう人たちは、それを学ぶまでの間、何度も混乱させられるのだろうと思う。

さて、ここまでは定義の話に過ぎない。
マークス氏の話には続きがある。

もう1つの重要な疑問は、リスクが事前に定量可能かということ。
私は可能でないと信じている。
将来のほとんどの出来事と同様、リスクとは意見の問題でしかない。

さらに、マークス氏は、事後であってもリスクの定量化は不可能と考えている。
例えば、ある投資で儲かった後でも、投資時点でリスクが高かったかどうかはわからないためだ。
リスキーな投資を行い、運が良かったなどというケースも多くあろう。
逆もまた然り。
マークス氏は日頃から「結果からその判断の質を知ることはできない」と言い続けている。

この考えを敷衍するなら、過去十数年のラクチンな投資環境で儲けた投資家も、自分の腕を過信すべきでないというところかもしれない。

2024年9月 ハワード・マークス氏「リスクの考え方」ビデオ

リスクは定量可能か:ハワード・マークス

投資における大罪とは:ハワード・マークス

リスクは隠れ、人を騙す:ハワード・マークス>

リスクは資産の質の関数ではない:ハワード・マークス

ハイリターンならハイリスクじゃないはず!?:ハワード・マークス




山田泰史山田 泰史 横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

 前のページ 

-投資
-,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 本サイトでは、オンライン書店などのアフィリエイト・リンクを含むページがあります。 その他利用規約をご覧ください。