ファイナンス理論の側から読み解くなら、一般的な銀行員やマークス氏の言う《リスク》つまり下方リスクとは、ファイナンス理論におけるリスクとリターンの両方を指しているのだ。
下方リスクにより
ブレが生じる部分はリスク
期待リターンが下がる部分は(負の)リターン
なのである。
筆者は、米国でファイナンス理論を学ぶ機会に恵まれ、商業銀行から投資銀行に移った。
この時、リスクは下方だけでなくなり、上方にも開けることとなった。
(実をいうと、貸出にも上昇リスクはあり、その幅がかなり狭いだけの違いである。
シニア・ローンのペイオフの分布は通常、上方に大きく偏っている。)
とにかく、ようやく理論どおりの会話ができるようになったのだ。
昨今の投資ブームで、投資家の中にはリスクという言葉に大きく2つの類型があることを知らない人も多いだろう。
そういう人たちは、それを学ぶまでの間、何度も混乱させられるのだろうと思う。
さて、ここまでは定義の話に過ぎない。
マークス氏の話には続きがある。
もう1つの重要な疑問は、リスクが事前に定量可能かということ。
私は可能でないと信じている。
将来のほとんどの出来事と同様、リスクとは意見の問題でしかない。
さらに、マークス氏は、事後であってもリスクの定量化は不可能と考えている。
例えば、ある投資で儲かった後でも、投資時点でリスクが高かったかどうかはわからないためだ。
リスキーな投資を行い、運が良かったなどというケースも多くあろう。
逆もまた然り。
マークス氏は日頃から「結果からその判断の質を知ることはできない」と言い続けている。
この考えを敷衍するなら、過去十数年のラクチンな投資環境で儲けた投資家も、自分の腕を過信すべきでないというところかもしれない。
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