ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、秋に予定する新著の上市を予告し、いつものように寛容にも事前に草稿を公開している。
新著のタイトルは『How Countries Go Broke』(国家はどのように破綻するか)。
すでにアマゾンにて予約を受け付けている。
まずは序章から第3章までの草稿が公開されている。
過去の著書『PRINCIPLES』『巨大債務危機を理解する』『世界秩序の変化に対処するための原則』の延長上といった内容になるようだ。
(浜町SCIでも『超長期サイクルが終わる時』と題し、ダリオ氏の考えをお伝えしたことがある。)
目次を見たところ、第2章ぐらいまでは、過去の書籍のテーマを再訪したものになりそうだ。
ここでは、ダリオ氏がSNSで公開した序章から第1章の草稿から、内容を暗示させる部分を紹介しよう。
(継続的なFPの読者にとっては、お馴染みのダリオ節である。)
ダリオ氏は、序章で4つの問いを読者に投げかけている。
国の債務や債務増加率には限界があるのか?
国の債務増加率が鈍化しない場合、金利やそれが影響するすべてのものには何が起こるのか?
米国のように主要準備通貨を有する大きく重要な国家は破綻しうるのか? もしもそうなら、それはどのように起こるのか?
債務や債務への対処について心配すべき時を教えてくれるような、観測可能な『巨大債務サイクル』のようなものがあるのだろうか?
想像するに、ダリオ氏は形は変われど、どのような国家にもある種の「破綻」が起こりうると考えているのだ。
そうした意見を世間に述べ続け、多くの反対意見を浴びてきたのだろう。
新著は、それに対するダリオ氏の答になるのではないか。
そして、そうした「破綻」の局面を迎えつつあるように見えるサイクルについて、果敢にマーケット・タイミングを試みるための議論を展開するのではないか。
ダリオ氏は過去の著書の中で、超長期債務サイクルやその政治・地政学的側面について広く歴史を当たっている。
今回も、同氏の成功を支えた《温故知新》のスタイルを貫くようだ。
私が見出したのは、1700年以降存在した約750の通貨/債務の市場のうち現存するのが約20%にすぎず、現存するすべてがこの研究で述べる機械的プロセスを通してひどく減価してきたということだ。
歴史を通して、巨大債務危機を回避したのは極めて少数の規律ある国々だけだ。
このファクトからすれば、通貨や債務の市場とは、むしろ消えゆくのが主流だということになる。
大きく減価することをある種の「破綻」と捉えるなら、長い歴史の中で通貨や国債は広義の「破綻」を逃れえないとなる。
日本について明治開闢以来の円が連続していたと捉えるなら、円もまたこの150年余りで1/160近くまで減価している。
しかも、この数字は概してインフレ(≒減価)に晒されてきたドルに対するレートなのだ。
では、1つの超長期サイクルが終わり、次のサイクルが始まるには、どれだけの苦しみを耐えなければいけないのか。
言い換えれば、大底を打つ条件とはどのようなものか。
ダリオ氏は4つの条件を挙げている。
(次ページ: ダリオ氏が挙げる新サイクル開始の条件)