債務サイクルが大底を打ち、再び新たなサイクル(≒新たな繁栄)が始まる条件として、レイ・ダリオ氏は4つの条件を挙げている。
a) 貨幣/債務が、持続可能な富の保蔵手段として十分に健全であること
b) 債務と債務返済負担が、返済のための所得と釣り合い、債務増価が持続可能であること
c) 債権者と債務者の両方が、そのような状態の実現を信じること
d) 貨幣と信用の発行額(availability)と実質金利が、貸し手・債権者と借り手・債務者の両方が必要とする水準に沿って低下し始めること
煎じ詰めれば、貸借や投資が成立するために、お金の出し手と取り手の両方が満足できる利回り等の条件が存在するかということ。
お金の取り手が満足できる調達コストを、出し手が運用利回りとして満足できるかにある。
(まさに今、円と円資産が問われている点だろう。)
今後、ダリオ氏はこの条件をある程度具体的に提示してくれるのだろうか。
債務危機の発生を予想する最良の方法は、債務対GDP比率(%)のような1つの要因や数字に注目することではない。
特に次の第2章で解説する、相互に関連する無数の力学を理解し注目することだ。
なるほど、難しくなりそうだが、第2章以降に期待しよう。
なお、ダリオ氏は自身が繰り返し述べてきた超長期債務サイクルの終焉の予想を決して終末論のようなものとして捉えているのではない。
これまでの著書と新著に共通する目的はもう少し前向きなところにある。
債務危機は大きなリスクとチャンスをもたらす。
それは帝国を破壊するだけでなく、もしも投資家がその進み方を理解し、乗り切り方についてよい規律を持つならば、大きな投資のチャンスを与えてきた。