オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、レバレッジの功罪についてのMemoを公表している。
内容はオーソドックスなものだが、なぜ今公表したかを想像すると興味深い。
今回のMemoのタイトルは「債務のインパクト」。
レバレッジが投資家らに及ぼす影響についての話だ。
マークス氏はこのMemoの発想を、あるベンチャーキャピタリストのブログから得ている。
創業から500年、1000年を超える日本の「老舗」についての研究だ。
結論はオーソドックス。
債務が多いほど、生き残れる困難の幅が狭くなっていく。
マークス氏は一概にレバレッジが悪いというわけではない。
「レバレッジによる利益と損失の増幅率は通常対称」と書いている。
レバレッジは幸福にも不幸にも同じように作用する。
しかし、それらが発現するタイミングは「対称」と言えない。
明らかに、最大のレバレッジによる損失が発生するのは、下方変動が有意な期間過小評価されたためにレバレッジ活用が過剰になっている時だ。
レバレッジに潜むタイムラグが、気づかぬうちに投資家をレバレッジに誘い込み、レバレッジを過剰に引き延ばしてしまうのだ。
マークス氏は、これをもう少し一般的な「リスクに対する態度のサイクル」と呼ぶ現象で説明している。
「レバレッジの活用が高リターンで報われると、投資家はレバレッジを良いものと見るようになる。・・・
しかし、状況が悪化すると、このプロセスは反転する。
レバレッジは報いられるのではなく、罰せられる。」
マークス氏が「リスクに対する態度のサイクル」と呼ぶフレームワークは、人間の営みで多く見られるものだ。
たとえば、企業の不正に着目しショートすることで有名なジム・チャノス氏は、金融詐欺の表面化が景気・市場サイクルに遅行するとのデータを示してきた。
状況が悪化した時、ある仕組みが不正であれ合法であれ、持続不可能となる傾向があるのだ。
マークス氏は、レバレッジの適正な上限が資産内容とタイミング等により変化すると述べている。
留意すべきは、何か新奇な、証明済みでない、リスクのある、ボラティリティのある、あるいは潜在的に生命を脅かすことをやろうとする場合は、最大のリターンを求めるべきでなく、慎重すぎるぐらいでいい。
生き残るためのカギはウォーレン・バフェットがいつも言っている: 安全マージンだ。