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一度受けたショックは長く続く:ジェレミー・シーゲル

ジェレミー・シーゲル教授が、警戒を緩めないまでも、やや明るいトーンを取り戻しつつある。
同時に、今度は過熱側を心配するような発言も見られ始めている。


「前から言ってきたとおり(関税にかかわる不確実性が)株式市場が10%下落した主因だ。
トランプ政権がランダムに関税を仕掛けて報復を招くのではなく予想可能な形で進めるならば、不確実性は減る。
そうなれば(株式は)すばらしく上昇するだろうと期待している。
過去4-5日間は、関税に関し行ったり来たりの発表が最も少なかった。」

シーゲル教授がウォートンビジネスラジオで、FOMC消化後の米市場について語った。
教授は従前から、トランプ政権の関税などの政策が経済・市場の不確実性を高め、市場に悪影響を及ぼしていると指摘してきた。
逆にそれが軽減・解消に向かえば先行きは明るくなるとの考えだ。
シーゲル教授は、関税の動向が明らかになるであろう4月2日に期待をかけている。

最近やや悲観の色が強かったシーゲル教授にしては、これは比較的明るいトーンの発言だった。
しかし、教授は油断はしていない。

でも、与えられてしまった投資家へのダメージを過小評価すべきではない。・・・
こうしたショックはすぐにはなくならず、心理や消費支出に波及し、影響が長く続く。

鈍化しつつある米経済の先行きについて、シーゲル教授は景気後退までは予想していないと話し、しばしば比較される1970年代との違いを説明している。
1970年代は

  • インフレ: 8-10%
  • 失業率: 6-8%
  • マネーサプライ: 原油禁輸などの悪影響に対応するため毎年10%供給されインフレ昂進

だったとし、2022年を除けば、現状のFRBのマネーサプライ供給は過剰ではないと話している。

以下、資産クラスについてのコメント:

  • 米国株ファクター: 2週間前からのマグニフィセント7等からバリュー等へのローテーションはまだ続いているように見える。
  • 欧州株: 14-15倍のPERなら利益成長は必要ない。ドイツの軍備拡張などは株式にプラスで好まれている。
  • 米10年債: 現在は景気悪化を心配し低下傾向だが、財政問題は解決しておらず、4.5%を超えるとの見方を変えていない。
    「経済成長が回復し、関税が合理的な範囲に収まり、人々の心理が回復すれば、長期金利は上昇するだろう。」

最近のコモディティ、金の価格上昇についてコメントを求められると、シーゲル教授は何度か「ハイパーインフレ」という言葉に言及しつつコメントした。

「コモディティ価格は堅調だが、ハイパーインフレというわけではない。
1年あたりのインフレ率上昇が15 bp、たとえ100 bpでもそれを議論するようなことじゃない。」

「ハイパーインフレ」というあまりにも極端な現象になぜ言及したのかはわからないが、もしかしたらそういう論調が一部で流行っているのかもしれない。
ハイパーというからには短期間に物価が10倍、100倍になるようなことを指すのだろうから、足下がそういう状況にないのは明らかだ。

シーゲル教授は、当面コモディティの上昇モメンタムが続きうると話し、モメンタム・トレードの可能性は否定していない。
一方で、将来のインフレと足下のコモディティ上昇を結び付けて心配するほどのことではないとも示唆している。

トレンド・フォロワーとして有能なら、チャンスになりうる。・・・
上手なモメンタム・プレーは大きな力を発揮しうる。
しかし、ハイパーインフレやインフレ高騰に対するヘッジという話なら、他の指標はそれを指し示していない。

この発言を深読みするなら、米市場・メディアで、1970年代に近いインフレ高騰を心配する声が高まっているのかもしれない。


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