一方で、足元の強気相場がこのまま継続する可能性ももちろん存在する。
最近また語られるようになってきたのが1990年代後半だ。
1990年代後半の再来が再び囁かれる
この時代にFRB議長を務めたのがアラン・グリーンスパン。
かつては《マエストロ》と称賛され、後にはバブル膨張を助長したとして批判を浴びた。
そのグリーンスパン氏が、数年前にたびたび1990年代後半を振り返って「生産性が上昇しているように見えた」と語っていた。
当時、通常ならもっと利上げしなければならないはずなのに、生産性上昇でインフレが上昇せず、利上げが不要になった点を説明した言葉だ。
IT革命が生産性上昇をもたらしたと解説されることも多い。
IT革命と生産性上昇というキャッチコピーは、AIと生産性上昇というのとよく似ている。
ちなみに、グリーンスパン氏が《生産性が上昇した》と言わずに《生産性が上昇しているように見えた》と話す理由には、一般用語としての生産性は上がっていなかったのではないかとの疑念があったのだろう。
経済用語としての生産性は、産出量を生産要素の投入量で除したものだ。
たとえば労働生産性なら、産出量を労働投入で除したものになる。
これはしょせんは割り算の結果にすぎない。
一般用語の生産性が上昇したのか、それとも全く別の理由で産出量が増えたり、投入量が減ったりしたのかがはっきりしない。
生産性上昇とインフレの間が本当に因果関係なのか注意しないといけない。
生産性が上昇しているように見え、インフレが高まらなかった1990年代後半は、景気がよいのに金融環境が比較的緩和的だった。
それが2000年にかけてドットコム・バブルを生み、泡が弾けることとなった。
今回もそうなる可能性はあるのだろう。
ただし、生産性上昇の真実とインフレの動向には注意したい。
しかし、財政悪化は経済・市場の足を引っ張る
もう1つ、このシナリオの障害となるのは、米国の双子の赤字の悪化だ。
ドットコム・バブルの頃、米国は財政黒字だった。
今回、米財政は相当に疲弊している。
今後の成長は財政政策頼りにはできない。
仮に景気後退入りする場合も、財政による支援を多くは望めまい。
しかし、それはFRBがファインプレーをしている。
景気後退入りなら、利下げ余地が大きく確保されている。
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