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アスワス・ダモダラン 今後10年で投資家がすべきこと:アスワス・ダモダラン
2024年8月20日

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授のTop Traders Unpluggedインタビュー最終回: インフレと投資、投資家へのアドバイス。


現状のインフレこそ正常かも

ダモダラン教授は、米インフレ上昇が投資に及ぼす影響を尋ねられ

2022年は歴史的な低インフレの10年から通常のインフレへ移行した大きな調整の年だった。
明らかにしておくべきは、2022年でなく2023-24年のインフレは2008年以前の通常のインフレだったということ。

ダモダラン教授は、歴史的に見ればインフレが上昇した現在こそ通常(ノーマル)だと話している。

現在のインフレの挙動は、サブプライム/リーマン危機前と比べて大きく逸脱したものではない。
危機前のノーマルのレンジ内だ。
ところが、2008年の危機で、米経済はデフレ/ディスインフレの時代に入る。
モハメド・エラリアン氏は、当時の変化をニュー・ノーマルと呼び、それが10年続いた。
長く続いたことで、人々はニューノーマルの方がノーマルであるかのように思うようになった。

ダモダラン教授は「異常な10年が終わった」と見解を述べている。
一方、多くの人は何がノーマルか取り違えているようだという。

「でも、みんな『いつ2%に戻るのか』と言い続けている。
この考えに基づいていれば、もはや二度と戻らないものを求め続けることになってしまうかもしれない。」

インフレは株式に追い風か?

ダモダラン教授は、インフレの株価への影響について解説している。
まずは中立のシナリオ:

インフレは株式にとって中立な変数となりうる。
(インフレで)金利が上がれば要求リターンも上がるが、インフレ率で利益も押し上げられるので、すべてが同様に上昇する。

ところが、この中立シナリオに対し、現実は良い方向にも悪い方向にも振れる。
悪い方向に振れたのが、インフレが急騰した2022年であり、程度の差こそあれこちらの方が多いという。

「歴史的に見ると、すべてを転嫁するのが難しいため、株式はインフレの悪影響を受けてきた。」

コスト面のインフレを転嫁できるかがカギであり、高インフレでは往々にして転嫁しきれないのだ。
巷で流布する《インフレは株に有利》という話にはいくつも前提があり、用心して受け取るべきだろう。
(特にここで指す《インフレ》がいったいどのレベルのインフレ率を想定したものかが重要だ。)

一方、良い方向に振れたのが2023年のマグニフィセントセブンの反騰だという。

「勝者は、インフレを転嫁できる企業だ。」

この条件が満たされる時、インフレが株式に追い風になっていく。

パンデミック後、ダモダラン教授はいくつか米インフレと投資についてファクトに基づく実証結果を公表している。
インフレを予想内の部分と予想外の部分に分け影響を検証するなど、興味深い結果を引き出している。
また、インフレを国内の現象に矮小化せず、為替や国際投資のリターンについても整理を行っている。

読むより考えろ

投資家へのアドバイスを求められ、ダモダラン教授は、FPが以前から《ダモダランのパラドックス》と呼んできたアドバイスを口にしている。

読むより考えろ。
この世界では、他の人の考えを探し、読むとても多くの機会に恵まれ、私たちは他の人の意見の海に溺れている。

溢れる情報、特に玉石混交の意見に溺れるなとのアドバイスだ。
ただし、ダモダラン教授は単に《人の意見を聞くな》と言うわけではない。
人の意見を読んでも、それを消化・吸収する間もなくまた別の意見を読みに行ってしまうやり方に苦言を呈しているのだ。
自身の意見を発展させることなく、人の話ばかりを聞いていてはいけないという趣旨である。

「投資の旅とは、自分はどういう人間で、何が自分の投資哲学を形成したのかを反映する独自の考え方を発展させることだ。
そのために、少し自分に無駄な時間を上げないといけない。」

ダモダラン教授は、機械的な作業は機械に任せた方が効率的だと割り切る。
投資家としての勝機はそれ以外のところにあるはずとし、今後10年で投資家が行うべきタスクを示している。

あなたの仕事は、ボットにできないことを探すことだ。


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