さて、佐々木氏のコラムに話を戻そう。
同氏はJP Morgan時代から、今私たちが直面しているリスクについて注意喚起し、近年ますます声を大きくしている。
その佐々木氏が2016年に書いたコラムについての記事を紹介したい。
同氏コラムのタイトルは「なぜドル円だけが3桁なのか」。
今回のコラムだけでも私たちは十分に意気消沈させられるが、2016年のコラムもなかなかだ。
特に落ちが考えさせられる。
こちらも原文を読まれるとよい。
アベノミクス当初から心配されてきた現象が今起こっている。
もちろん同政策すべてが間違いというわけではない。
少なくとも「3本の矢」のフレームワークは正しかった。
しかし、今、当初から心配されてきた現象に対してまったく無防備だったことを知り、驚かされている。
佐々木氏はアベノミクスのスタート直後の2013年4月に『インフレで私たちの収入は本当に増えるのか? 』と題する著書を上市している。
この頃はまだみんな《リスクオフの円高》のレジームにいたが、今回はどうだろう。
不気味なのは、多くの点でアベノミクスのスタート時からその帰結が予想されていたことだ。
長期投資家・国際投資を行う投資家にとって《リスクオフの円高》はちょっとしたチャンスだった。
長期的な中央回帰が見込めるならば、不測の事態や不況によるリスクオフの円高は格好の海外資産の買い時だった。
強い円を用い円投外貨転し、リスクオフで下落した海外資産を買う。
中央回帰するならば、為替と資産価格の両方でリターンを期待できる。
佐々木氏のコラムは、中央回帰を当てにするなというもの。
そうなると《今は円安だが、急いで海外投資すべき》というような少々危なっかしい考えさえ頭によぎるようになる。
佐々木氏の2016年の示唆が実現しないよう祈りたい。