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債務スクイーズとともに起こること:レイ・ダリオ

レイ・ダリオ氏の新著『How Countries Go Broke』(国家はどのように破綻するか)の草稿から「第5章 民間部門と政府の債務危機」を紹介。


「第4章 典型的な順序」では、国家が実質破綻していくプロセスを9のステージに分けて概説していた。
第5章では、そのステージ1から4までについてデータとともに詳述している。
前記事では、日本においては「3(債務スクイーズ)をスキップして4、5が心配されている」と推測した。
3と4は同時進行とされているから、心配する4、5が実現する場合、3も実現するということかもしれない。
ダリオ氏も第5章で「これ(訳注:3と4のことを指すと思われる)はまだ米欧日中ではまだ起こっていない)と書いている。
ステージ3の債務スクイーズは国の借換が困難になるということと理解し、ここでは同時進行のステージ4で何が起こるのかを見ていきたい。

前記事ではこれを次のように要約して紹介した:
「a) 市場が金融を引き締め、b) 経済を弱め、c) 貯蓄・準備金を減らし、d) 通貨に下落圧力を与える
中央銀行は信用緩和(直貸しや債権買取り)を行い、通貨が下落
長期金利が短期金利より速く上昇し、同時に通貨下落」
これを(日本を例に)もう少しかみ砕くと

  • (ステージ2 財政悪化)
  • インフレや円安
  • 通貨防衛の金融引き締めや円買い介入
  • 引き締めで経済が悪化
  • リスクプレミアム上昇、リスク資産下落
  • 介入のため外貨準備は半分以下に減少
  • 介入しても通貨は下落し、金が上昇
  • 2年ほどで通貨防衛が放棄される
  • 通貨や債務性資産の価値が低下、金が上昇

(注: ダリオ氏は通貨下落における通貨価値を測るために、金価格上昇を通貨下落の尺度としているようだ。)

日本でもまだここまでは進んでいない。

本章で興味深いのは、こうしたマクロ上の変化の中でのミクロな経済主体が典型的にどう行動するかを観察している点だ。
(以降も日本と円を例に要約。)

国内企業 海外での収入を円転せず。円安ヘッジを増やす
外国企業 日本子会社の円を外貨に。日本での事業活動を不活発化
国内銀行 債務性資産を売却。資金を日本で持つより海外で持つ方が有利に
国際的な銀行 面倒が付きまとう日本事業・拠点を縮小
大口の国際的投資家(含む外貨準備) 流動性の低さ・悪影響への配慮により円資産を売れなくなる。新規に円資産を買わない
国内貯蓄 分散。インフレヘッジ資産。外国株。外銀口座開設。銀欧預金をやめハードカレンシーへ移し替え
インフレに備え買物を前倒し
富裕層は価値下落・増税・収用を恐れ資産を海外へ
投機 債券自警団がさらに債務性資産を押し下げ
外国投資家が投資を引き揚げ

いくつかの項目がすでに始まっているようにも見える。
一方で、多くの項目はまだ始まっていない。

レイ・ダリオ氏の新著『How Countries Go Broke』草稿

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