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円の対ドル20-30%上昇を確信:ジェレミー・グランサム
2024年3月13日

バブルの研究家としても知られるGMO共同創業者ジェレミー・グランサム氏が「米市場最大のパラドックス」と題する論文を公表している。
リスクが極めて多い中で市場が熱狂に包まれている点をパラドックスと表現したものだ。


利益率と株価倍率の両方が歴史的水準なら、ダブルカウントと二重の危険だ。
いつか将来、1982年7月または2009年3月の再来、史上最低水準の株価倍率と利益率の大幅低下の同時到来が待っている。

グランサム氏が、歴史的に見て高い水準にあるシラーCAPEと企業利益を危うんでいる。
いつか両方が同時に崩れると予想している。
同氏の主張は《米国株は危ない》というものだ。
その一方で(機関投資家など)どうしても米国株を保有し続けなければいけない投資家がいることも認識している。
そういう投資家には次善の策として4つの資産クラスを提案している:
クォリティ株、資源株、気候変動関連株、ディープバリュー株だ。

グランサム氏は今月1日時点で34倍となっているシラーCAPEについて、この水準から「持続的」上昇を遂げた前例はないと指摘する。
一方、持続的でない上昇の例としては1980年代の日本のバブルと1990年代終わりのテック・バブルだけと紹介した。

今が危ういとのグランサム氏の指摘はまっとうだ。
しかし、だからといってすべての投資家が弱気になれる話でもない。
同氏の指摘は裏を返せば、過去に2度さらに(持続的でないにせよ)上昇した前例があることを示している。
それに賭けたいと願う人も世の中にはいるはずだ。

グランサム氏は(少なくとも長期投資家にとって)重要で単純明快な真理を述べている。

資産価格が倍になれば、将来リターン率は半分になる。

米国株市場の上昇に対するグランサム氏の反応は早かった。
2020年5月には株式エクスポージャーを30%減らしている。
パンデミックで市場が急落し反騰した直後のことだ。
翌6月には「バブルが進行中」と宣言した。
その後、予想外のことが起こった。
グランサム氏は2021年にバブルが崩壊すると見ていたが、AIブームでバブルが延長されたのだという。
同氏はAIが有望であることを認めつつ、それと株価は別物と冷静だ。

こうした技術革新、インターネット、電話、鉄道、運河でも、膨大な誇大広告がなされた。
投資家が最終的な技術の可能性に注目し、極めて長期の可能性のほとんどをすぐさま現在の市場価格に織り込むため、株式市場はバブルとなった。
こうした革新ははしばしば最終的に初期の投資家が見通せたとおり、時にはそれ以上の変革をもたらした。
しかし、そうなるのはバブル崩壊が始まる長い失望の期間の後だ。

グランサム氏は、現在の「ばかげた投機」が「最終的に景気後退で終わる」と予想する。
長期で見てもリスクが多い投資環境だ。
こうした中ではリスク顕在化の前に「もっと合理的な価格がついている市場に駆け込み、利益を取る」ことが重要だと説いている。

では、必ずしも米国株に投資する必要のない投資家はどこを狙えばよいのだろう。
グランサム氏は「新興国市場株式と米国以外の先進国株式(含む日本)のバリューまたは低成長の部分」を推奨している。
相対的に安いだけでなく「フェアプライスから通常より安いレンジの価格」が見つかるという。

GMOは特に日本を選好している。
私たちは最近のゆっくりだが着実な日本の企業資本主義の改善を楽観視している。
さらに、円が近いうちに20%、あるいは30%までもドルに対して上昇すると強く確信している。

日本円は過去の世界的景気後退期において大きく円高に振れることが多かった。
グランサム氏は今回もリスクオフの円高を見ているようだ。
仮に同氏の予想が当たるなら、日本株の投資家は名目株価と円相場の両方で投資価値の上昇を見込めることになる。


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