ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、いつものテーマについて語っている。
目新しい点はないが、ダリオ節が好きな人は楽しめる内容だ。
「典型的には民間部門がどんどん債務を増やしていくと、公共部門、特に政府が中央銀行の支援の下、債務を引き受ける。
現在、政府債務が大きく拡大し、経済の債務への感応度が低下している。・・・
サイクルの観点からは、まだ総債務対GDP比率は過去最高近辺で上昇を続けている。」
ダリオ氏が9月13日付の自社ポッドキャストで、債務拡大の局面について語った。
財政出動には事実上、政府による民間債務引き受けの側面がある。
これこそが、異例の急激な利上げによっても米経済が急停止しなかった主因との意見だ。
景気拡大期には人々は借金と支出を増やすが、いつかは景気が鈍化・後退する。
すると政策対応が求められ、政府が民間の肩代わりをすることになる。
つまり、政府の財政は少なくとも一時的に悪化する。
これが短期サイクルの話なら、次の好景気で財政再建が図られ、財政状況は回復するかもしれない。
しかし、財政再建が不十分なら、これは長期サイクルの話となり、債務は何十年にわたって累増してしまうかもしれない。
こうした変化は、今世界が経験しているように、インフレや政府の利払い負担増の問題となっていく。
今回ダリオ氏が言及したのは主に短期サイクルの話だったようだ。
「中央銀行がマネーを供給し、金融を引き締め、典型的には経済が圧迫され、返済負担により経済が鈍化し、サイクルのもう半分に入っていく。
これが景気後退と景気拡大と呼ばれる短期サイクルだ。
もう12か月半たち、短期債務サイクルの半ばに入っている。」
ダリオ氏は現在が短期サイクルの半ばと考えているようだ。
米サイクルが通常かなり粘り強いことを考えると、まだ拡張期がしばらく続く可能性を見ているのかもしれない。
(ただし、この発言は9月中旬のものなので、今は変わっているかもしれない。)
最近のダリオ氏は、各国の長期サイクルの話をする際、頻繁に日本を先例として挙げる。
米国の話でも中国の話でも、1990年以降、バブル崩壊後の日本との比較を用いる。
先日も、過去15年間で日本国債への投資価値が米国債へのそれより90%劣ったとの計算を紹介している。
このポッドキャストでもその計算に言及している。
(債務)サイクルにおいて債務を減価させるという点で、(米国債との比較において)実質90%の減価とは莫大な富の喪失だ。
この数字は為替と金利差の累計で、平均金利差が約3%だから、15年3%が積み上がり、円相場の下落もあった。
こうした見方からすれば、日本国債はすでに大暴落していたに等しいのだろう。
これは単に米国債との比較だけの話ではない。
「米国の債務性資産はマシだが、それでも負けていた。
インフレに負け、名目債(訳注:利回りが物価連動でないもの)は価値を減じている。」
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