海外経済 国内経済 投資 政治

勝者は敗れ、敗者はひどく敗れる:レイ・ダリオ

このポッドキャストは社内で行われており、くどく、しつこく、深みのあるものになっている。
すばらしいのは、ダリオ氏がいつも冒頭に述べるフレームワークを相当に簡潔に収めている点だ。
そのフレームワークとは、世界や世界経済が「5つの力」:
 債務・貨幣膨張、内部対立、国際対立、環境・天災、テクノロジー
の影響を強く受けているというもの。


ダリオ氏は、こうした構図の中で、長期債務サイクルが行きつく先はいつも同じと話す。

債務が大きすぎるので、どうやるかは別として、(債務の)価値を下げざるをえない。
デフォルトにはならないから、債務の実質リターンを下げざるをえない。
それが典型的なサイクルだ。

借金をしすぎた人がいて、その状態が持続不可能となれば、誰かが負担を肩代わりしなければならなくなる。
民間部門が債務過多になって、それを公共部門が引き受け、今度は公共部門で債務が積み上がる。
それが持続不可能な程度となれば、民間部門と公共部門の間で富を移転するしかない。
増税か、公共サービス(水道・警察・ゴミ収集から年金まで)削減か、インフレとなる。
(債務の大半が自国通貨建ての場合、無秩序な被害をもたらすデフォルトは選択されにくい。)

ダリオ氏が言及した債務の減価とは、名目金利を低位に維持したまま高めのインフレを容認するやり方だ。
同氏は、日本がまさにこれを実践してきたと考えている。
当然、インタビュワーは不安になる。
米国も日本化する運命なのか、との不安だ。
ダリオ氏は、まだ決まった運命ではないと考えているようだ。

米国はブレークスルーとなりうる驚くべき技術のほとんどを有している。
どう使うかにもよるが、この生産性にかかわる力は大きな前向きな力だ。
・・・
しかし忘れてはいけないのは、3.33億人のうちの1.5億人だけが、そうした指導的部分に属していることだ。

ダリオ氏は、自身が繰り返しくどく強調してきた「5つの力」に言及する。
5つの中で最後のテクノロジーのみが、生産性上昇というプラスの要因になりえ、米国の日本化を防ぐ力になりえるという。

とは言え、楽な道ではあるまい。
インタビュワーは、米国を含む多くの国・地域が問題を抱える中で、どのような国・地域が今後有望か質問している。

最終的には勝者は敗れ、敗者はひどく敗れる。
中立の国々が真の勝者になる。

ダリオ氏は、いくつか付帯条件を付けた上で、中立国が戦時中に最も有利であると述べている。
付帯条件とは

  • I/SとB/Sが良好: 債務過多は避ける
  • 内部対立が少ない
  • (外国との戦争の可能性が低い: つまり中立)

その上で、「よいところであっても、高くなればよい投資ではなくなる」として、適切な分散投資が重要と話した。
ちなみにダリオ氏は、中立国の例としてインドやアセアン諸国を挙げ、「資本形成に必要な資金があれば、経済(発展)サイクルに乗るはず」との見通しを語った。

上記の条件からすれば、米国への投資は明らかに不合格となろう。
しかし、ダリオ氏は米国を一概に切り捨ててはいない。

「米国に投資してはいけないというわけではない。
テック株はすばらしい投資だったが、テック株に集中してはいけない。」

ダリオ氏は、インフレ・リスクに備える投資先として物価連動債と金について解説した。
実質金利への投資として物価連動債が挙げられるとし「インフレだけでなく実質金利低下でも上昇する」とメリットを話した。
また、物価連動債や金にクレジット・リスクがほとんどない点にも言及している。
つまり債務サイクル終期の悪影響を受けにくいのだ。


 前のページ 

-海外経済, 国内経済, 投資, 政治
-, , , , , ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 本サイトでは、オンライン書店などのアフィリエイト・リンクを含むページがあります。 その他利用規約をご覧ください。