ジェレミー・シーゲル教授が、とても強いと受け取られた2日の米雇用統計の中身について、疑問を呈している。
「これは私が見てきた中で最も奇妙な雇用統計の1つ、あるいは最も奇妙なものかもしれない。」
シーゲル教授がウォートン・ビジネス・ラジオで、2日発表の米雇用統計についてコメントした。
2日の雇用統計はほぼ全面的に強い結果と受け止められ、インフレ圧力によりFRB利下げが予想より遅れるとの憶測を生んだ。
非農業部門雇用者数は市場予想を大きく上回り、前月分も上方修正された。
平均時給も市場予想を大きく上回った。
シーゲル教授が首をかしげるのは平均労働時間だ。
これが大きく低下し、雇用者数増を打ち消し、(掛け算で求められる)総労働時間も低下したのだ。
こんな労働時間の急低下は、景気後退でしか見られない。
・・・とても異常な現象だ。
腑に落ちない点があるためか、この日のシーゲル教授にはいつものような全面的な強気トーンはなく、全体を通して慎重な話し方だった。
平均労働時間の低下については、悪天候が効いているとの分析もある。
これが(割り算で求められる)平均時給を押し上げたとの解釈だ。
もしもそうならば、今回の雇用統計はさほどインフレ的ともいえないのかもしれない。
シーゲル教授は、予想を大きく上回った平均時給の伸びについて持論を展開している。
生産性の上昇が賃金上昇によるインフレ圧力の多くをオフセットしているという。
教授は今回の雇用統計を「当惑」と表現している。
最近の米労働統計が不規則な動きをしているとの指摘はこれだけではない。
パンデミック後の労働市場の急激な変化が、統計の読み方を難しくしているようだ。
ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏も、最近度々労働統計の奇妙な点を指摘している。
州の統計と全体の統計で整合が取れない動きがあるという。
米労働市場を強いと見るべきか、弱いと見るべきか、しばらく注意する必要があるようだ。
とりあえず、強い雇用統計は利下げが遠のいたとの連想を促し、金利は上昇で反応した。
強い雇用は強い経済の証拠でもあるから、株式も上昇で反応した。
(今の株式市場は(利下げ後倒しをネガティブにとることもなく)とにかく明るい面を見る傾向があるようだ。)
株式にとって、金利とはバリュエーションに影響を与える要因だ。
バリュエーションと対になるのは企業の利益。
では、その利益はどうなのか。
「利益はどうかといえば、失望を買った銘柄もあった。・・・
出てきている利益は基本的に大丈夫だ。
私はまだ今年のS&P 500の利益が244を超えると信じている。」
企業業績についてはCNBCでいじめられたばかり。
2日のS&P 500終値4,958.61を244で除すとPER 20.3倍。
EPSもPERもちょうど無理のない数字といったところだろうか。
シーゲル教授は、先月末から株価が急落しているニューヨーク・コミュニティ・バンコープについてもコメントした。
商業用不動産向けローンに関し貸倒引当金を積み増したことで信用不安を誘った。
教授は専門でないと断りつつも、昨年のシリコンバレー・バンクのような混乱や銀行危機への発展は予想しないと話した。