日本株を見る上で、インフレや金融政策がどうなるかで大きく分岐するのなら、日本株を投資するなら為替について自問しないといけない。
暗に、円安だけが可能性ではないと言いたいのだろう。
インフレ、金融政策、為替、景気について合理性のあるシナリオを想定する必要があるのだろう。
さて、こうした外国勢からの見方を日本人はどう受け取ればいいだろう。
日本人は円の世界で生きているのだから、為替ヘッジなど関係ないという人もいるかもしれない。
しかし、円の価値が低下してきた点を無視するわけにはいかない。
名目の資産額が増えても、その単位となっている円の価値が低下したからだ。
その意味で、外国勢の考え方とある程度同期した感覚を持つことにも意味があるだろう。
カーニオルタンブール氏は、別の発言でも日本に触れている。
高齢化の先例として、日本を研究しているという。
「日本はこの状況をしばらく経験してきたが、ほとんどの投資家は、日本がそうなら何を意味するのかについて明確な見方を持っていない。
これは私たちが熱心に研究し考えているトピックで、日本のケースが参考になるのか否か。
日本は、今私たちが参加している大きな市場が将来どうなるのかを示している。」
投資家が学んでいないというのは、日本人の投資家も当てはまるかもしれない。
日本が苦しんでいる人口動態の変化が海外でも起こるとしたら、日本人の海外投資はそれをどう取り込むべきか。
こうした問題意識を明確に持っている投資家は多くないだろう。
アジアの投資先として、中国の代替としてのインドについて尋ねられると、カーニオルタンブール氏は「インドは魅力的」と答えている。
ただし、分散投資への活用については過度に集中しないことを奨めている。
「中国は最も分散効果がある。
中国以外でやるなら、インドだけというように過度に集中することなくアジア諸国のバスケットで分散を図るとよりうまくいくだろう。」
カーニオルタンブール氏は、最近の市場テーマであるAIについて尋ねられると、この5か月弱での見方の変化を滲ませた。
「1月だったら『ほとんどの趨勢的な力はインフレ的で、1つの大きなデフレ的な疑問符がAIだ』と答えたろう。
AIは明らかに大きなデフレ的イベントとなりえ、経済における労働者、特にホワイトカラーの大半に置き換わりうる。」
ブリッジウォーターは、米インフレが趨勢的に高止まりするとの見方だ。
その中で、AIはデフレ的力を及ぼしうるとの考えを持っていた。
しかし、その可能性もやや勢いを失っているようだ。
少なくとも足元では、ブームに乗り遅れまいと、結果は出ないままに多くの企業が莫大な支出を余儀なくされているからだ。
AIの第1段階はインフレ的な力に感じられる。
・・・
最終的にはとてもデフレ的な力になるだろう。
AIの熱狂はそこそこ冷めてきているのだろう。
そして、ブリッジウォーターは目下インフレ推しらしい。