オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、今月上旬の世界市場の動揺について復習している。
「1か月前のお気楽な環境の中、私はパートナーのブルース・カーシュに、ほとんどの人が『噂で買ってニュースで買う』ようになっているかもしれないと話していた。」
マークス氏が22日付のメモで、先月の不吉な予感について回想している。
現実が「『かなりよい』と『それほどでもない』の間で揺れる」のに対し、市場心理の振り子はしばしば「『完璧』から『絶望』へ」と振れるとの持論を展開している。
それが、今回の動揺の80%を説明できるという。
(つまり、それ以外のファンダメンタルズ等の要因は小さかったといいたいのだ。)
上旬の急落は状況が悪化したためではなく、悪化が認識されたにすぎないとし、経済学者ルディガー・ドーンブッシュの言葉を引いて変化のスピードについて語っている。
『物事はあなたが思うより実現するのに時間がかかり、(実現の)その後、予想より速く進む。』
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市場が動いている時は、誰も合理的分析を行わず、区別もしない。
主に心理的に振られ、中身を見ずに売る。
古い諺、『危機ではすべての相関は1になる』のとおりだ。
シカゴ学派の影響を強く受けているマークス氏は、市場がある程度は効率的との考えを持っている。
しかし、短期的には市場は「投票機」に過ぎないとして、それを動かす「病気のリスト」を紹介する:
「変動する心理、偏った認識、過剰反応、認知的不協和、急速な感染、不合理、希望的観測、忘れっぽさ、準拠可能な原則の欠如。」
市場の効率をある程度信じているはずのマークス氏は、ここでは市場を信じるべきでないと書いている。
市場価格には「平均的投資家」も大きな発言力を持っており、市場の見識は「平均的投資家」を大きく上回るものではないという。
しかも、短期的な相場変動は、長期保有のオーナーや長期投資家ではなく、比較的少人数の市場参加者によって引き起こされていることも多いからだ。
マークス氏は、こうした市場の振り子を目の当たりにして投資家が採るべき姿勢をアドバイスしている。
最悪なのは、他の投資家がこうした不合理な揺れを起こした時、それに参加することだ。
はるかによいのは、市場の働きの理解に支えられ、戸惑いつつ傍観することだ。
さらによいのは、ミスター・マーケットが状況に過剰反応しているのを見抜き、価格が高くてもミスター・マーケットが買いたいときに売り、ミスター・マーケットが投げ売りしたい時に買うよう計らうことだ。
市場が不合理であることを強調した上で、マークス氏は投資家の仕事の本質を語っている。
投資家の主たる仕事とは、価格が根源的価値から逸れた時に注目し、それに応じてどう行動すべきか理解することだ。
感情ではない、分析だ。
さて、読者は上旬の市場の動揺で、感情でなく分析によって行動できただろうか。