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戦争は悲惨だが投資のチャンス:ジェレミー・グランサム
2022年3月15日

金融史の研究家としても有名なGMOのジェレミー・グランサム氏が、戦争と投資、安い資産と高い資産について経験・持論を語っている。


世界は突然少し変わってしまった。
歴史家として確信を持って言えるが、このような地政学的イベントは殺人的に予見が難しい。

グランサム氏がThe Meb Faber Showで、ロシアのウクライナ侵攻についてコメントした。

このインタビューの面白いところは、グランサム氏がかなり本音で多くを語っているところ。
ESG投資をはるか昔から実践し、良心的投資家と見られてきた同氏の本音が垣間見える。
決して悪魔的というわけではないが、建前にこだわらない率直な物言いが印象的だ。

1月のうちにロシアで体制変更があり、再び蜜月が訪れるかもしれない。
あるいは、長年の超冷戦が始まり、至る所に影響が及ぶかもしれない。

グランサム氏の指摘は、今の市場環境をよく表している。
今回のロシアの侵攻はあまりにも唐突で度を外れた印象がある。
だから、長く続く可能性もある反面、ロシアで政変が起こり、逆の方向に向かう可能性も無視はできない。
この可能性が投資家を逃げるでもなく進むでもなく立ち止まらせている。
もちろんダウンサイド、つまり紛争・対立が長く続く可能性を度外視すべきでない。

それに対してグランサム氏は率直な経験談を語っている。

「戦争は株式市場にとって明らかに悪いものとは限らない。
多くの設備投資、新製品、言うなれば『戦争による不当利得』をもたらす。
だから、戦争は株式市場にとって必ずしも悲惨な時期ではない。
他のみんなには悲惨な時期だが、戦時中はみな多く働き、多く生産するものだ。」

米ソ冷戦が終わった後、世界はかなり平和だった。
遠くで戦う戦争はしばしばあったが、少なくとも日米欧に関するかぎり、どっぷりと浸かるような戦争は少なかった。
だから、私たちは忘れているところがある。
日本にしても、冷戦中アジアでの2つの戦争で経済が恩恵を受けたことは否めない。
それを「不当利得」と呼ぶかどうかは人に寄ろうが、とにかく戦争で儲ける人や企業は少なくない。
つまり、投資家にはチャンスにもなりうる。

いかなる悪い時代、大きな試練の時代も、コインの裏側にはもちろん大きなチャンスがある。
2度の大戦は技術を大きく飛躍させた。
第2次大戦は特に後の20年米国を高めてくれた。

グランサム氏は1-2年先にとらわれず、10年後などもっと長期の視点を持つよう促している。
市場と社会の長期的な変化を予想・希望している。
市場についてはいつものようにベアな予想を語っている。

長期的不足がインフレ圧力をさらに長くするかもしれない。
したがって、PERと金利が変化する。・・・
不足、発明、試練、インフレ、資産価格下落の時代は、買う人には良いが、売る人にはさほど良くない。

一方、社会については希望を語っている。

少し資本から労働へバランスが移ることを祈っている。
私は反資本主義者ではないが、資本主義が社会のそれ以外と相反し始めれば、そうなる。
これまで相反し始めてきたし、最近はもっとそうなったと思う。

グランサム氏はこれまでも、過去20年あまりに富の資本・労働への分配が大きく資本に傾いてきたと指摘してきた。
それが、米国株の強気相場を支える大きな要因となってきたとの分析だった。
これが今修正を迫られており、ある程度同意するといいたいのだろう。

もちろんこうした変化は現時点の投資家にとっては不利益変更になる。
この点についてグランサム氏は、やや詭弁ぎみではあるが、安い資産の効用について説明している。
年6%利回りの安い資産があったとする。
仮に価格が倍になれば年3%利回りになる。
どちらがいいか、という設問だ。

複利で48年経つと
 年6%なら16倍
 年3%なら4倍

老練なバリュー投資家はこう分析(?)する。

6%利回りが3%利回りになれば、48年で(資産額は)1/4になる。・・・
それなのに、みんな高い価格のついた資産を愛している。
とても近視眼で、基本的に少し算数ができないためだ。


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