マーケットタイマーと一線を画す投資行動
マークス氏は、自身がマーケット・タイマーではないという。
その一方で『市場サイクルを極める』という本まで出している。
ファンからよく突っ込まれるポイントだ。
今回のメモでマークス氏は「マーケットタイマーではない」という意味を説明している。
- 市場下落を予想して魅力的な長期保有を売らない。
売るのは(a) 目標株価到達 (b) 投資先の悪化 (c) より魅力的な投資先発見、だけ。 - 安ければ待たずに買う。
将来の値動きより銘柄のバリューの方がはるかに計りやすい。
ここでマークス氏の話が、売り買い対称でなく買いに寄っていることに気づかれるだろう。
もちろん、これはファンド商売の性質にもよる。
ファンドとは投資して信託報酬を得る商売だ。
しかし、それだけではないようだ。
天井買い、底値売り、どっちが最悪?
天井で買うのと底で売るのとどちらが悪いか?
私にとっては答は簡単、後者だ。
天井で買えばしばし苦しい時期を過ごすことになるが、長い目で見て右肩上がりの市場で長期投資するなら、まあ辛抱できるとの趣旨のようだ。
一方、底での売りはもう少し深刻だ:
市場の底で売れば、その下方変動は恒久化される。
さらに重大なのは、多くの長期投資家を裕福にしてきた経済拡大・市場上昇のエスカレーターを降りてしまうことになる。
長い目で見て市場が上昇すると信じ、その機会を逃すべきでないとの思いなのだろう。
実際、米市場とは(少なくとも今まで)そういう市場だった。
マークス氏は、底で売ることを「投資における大罪」と表現している。
マークス氏は、決してマクロ環境に無頓着であるわけではない。
ミクロ投資を判断する上でマクロ環境の前提が必要となることも多い。
ディストレスト投資ならなおさらだ。
そういう場合、極端なシナリオを前提とせず「中立的」な前提を設けるようにしているという。
肝心なのは、オークツリーにおいて私たちはこれらを大いに謙虚な姿勢で行っているということ。
状況が他の選択肢を許さない場合のみに、中立的前提・通常の態度から離れるようにしているということだ。