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新興国投資は視野を大きく持て:マーク・モビアス
2024年6月27日

新興国市場投資の草分けマーク・モビアス氏が、新興国市場投資にあたっては手段について柔軟な考えを持つよう諭している。


ただ単に『インドや中国、新興国市場に投資しよう』と言うのでは意味がない。
グローバルな視点が重要だ。

モビアス氏がBloombergで、新興国市場への投資のしかたについて柔軟な考えを持つよう促している。

もちろんモビアス氏は新興国市場への投資に極めて前向きだ。
新興国市場は先進国経済より2倍ほども経済成長が見込まれ、そこに大きなチャンスがあるためだ。

しかし、大きなチャンスを見ているのは投資家だけではない。
企業の側も新興国市場に大きなチャンスを見出し、積極的に進出している。
モビアス氏は、先進国の上場企業の中に「事実上新興国市場の企業と言える企業」が多いと指摘する。
新興国市場で多く稼ぐ企業は、国籍・上場市場こそ先進国でも、企業価値の源泉を大きく新興国市場に依っていることになる。
リターンもリスクも新興国へのエクスポージャーが大きくなっている企業はとても多い。

「よい投資をしたければ、視野を広げないといけない。」

モビアス氏は柔軟に考えるように促す。
新興国市場そのものへの投資だけでなく、先進国の多国籍企業やADRもスコープに入れるようアドバイスしている。

一般投資家が例えばインドに投資したいとき、真っ先に思いつくのがインド株ETFだろう。
実際、そうしたETFが現在日本人の間で人気化している。
しかし、これはインドという看板を信じて目をつぶってお金を投じるようなもの。
投資配分は構成銘柄の時価総額等(アクティブ・ファンドならファンド・マネージャー)にゆだねることになる。

一方、インドへのエクスポージャーが大きく、経営もしっかりした自国企業を見出せたなら、話は大きく変わって来る。
日本人にとって入手可能なインド株の情報はそう多くないが、経営のしっかりした自国企業が機能してくれるなら、インドへのエクスポージャーをうまく操縦してくれるかもしれない。
大切なのは、株価指数やファンド・マネージャーより信頼のおける経営陣を見出すことだろうが、概して後者の方がパフォーマンスを測りやすい。
ほとんど説明もされないファンドの成績より、企業の業績は経営者の重要な通信簿になってくれるだろう。
すばらしい自国企業を発見できたなら、その株式への投資の方がインド株ETFより有利な《インド投資》になるかもしれない。

日本は重商的な経済政策を好み、円安誘導で輸出を後押ししてきた。
株価指数に影響の大きな大型株では米・中をはじめとする外国経済へのエクスポージャーが大きい銘柄も多い。
こうした銘柄に投資するのは、日本への投資というより外国市場への投資というべきかもしれない。

ウォーレン・バフェット氏の商社株買いもこの変形だ。
円債を売って(資金調達)大手商社株を買うとは、日本への投資というより商社の主戦場である外国、とりわけ新興国市場への投資と見る方が理にかなっている。

モビアス氏のアドバイスは、ポートフォリオ配分という面でも考えさせられるものだ。
新型NISAでは、いわゆるオルカンの投資信託が人気だという。
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは、世界のエクスポージャーを適正に反映しているだろうか。
こうした株価指数に強く効いている大型多国籍企業の株は多分に新興国市場のエクスポージャーにバイアスを持っていないか。
主に時価総額に左右される配分はそれをネットアウトしているわけではない。
もしかしたら、大型日本株を多く保有する日本人は、外国株を保有していなくても、新興国市場をはじめ外国市場のエクスポージャーを十分取れているのかもしれないのだ。
国内経済だけでなく外国経済にも大きな感応度を有する《超景気敏感株》たる日本株のゆえんである。


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