このメールでは世界の株式の(15%超の)ドローダウン時におけるフィクストインカム、コモディティのパフォーマンスについて1970年まで遡っている。
カーニオルタンブール氏は、ドローダウンの原因によって2つのグループに分類している。
- 経済成長リスク: 経済成長の悪化による株価下落
ITバブル崩壊(2000年~)、サブプライム/リーマン危機(2007年~)、欧州危機(2011年)、パンデミック(2020年)。
「分散子として債券が極めて有効だった」。
ディスインフレの時代であり、金融緩和がやりやすく、債券価格が上昇した。
- インフレリスク: インフレ退治の金融引き締めによる株価下落
1970年代、1980年代、1990年代、2022年のインフレ時。
「コモディティのバスケットが有効な分散子だった」。
インフレがコモディティ価格を押し上げた。
なるほど、極めて理解しやすいすばらしい観察結果だ。
ただし、読者には疑問が残る。
今回は、どちらなのか。
今後の展開でどちらに傾いてもおかしくないだろうが、今のところは何となく両者の中間にあるように思える。
カーニオルタンブール氏は続ける。
債券とコモディティを組み合わせ保有すれば、ヘッジに高いコストを支払うことなく、来るかもしれない様々なタイプの株価下落に対する分散を実現できるだろう。
なるほど納得の解説だ。
(新鮮味はないけれど。)
加えて、カーニオルタンブール氏は重要なポイントを付言している。
それは、リスク・パリティ(リスクの均衡)を実現するために必要な投資元本のギャップである。
株式は(長期資産と呼ばれることもあるように)ボラティリティが小さくない。
特に、短期債と比べれば、σリスクが大きい。
株式のσリスクを債券でオフセットしようとすれば、債券の金額を増やすか高デュレーションの債券を選ぶかしないといけない。
このことが一般投資家に与えるメッセージは何か。
株式:債券の割合、例えば50:50、60:40としたところで、リスク・パリティには債券が足りない可能性が高いということだろう。
あるいは、金額でなくデュレーションでパリティを取ろうとすると、金利上昇の場合に大きな損失が出る長期債を抱えなければいけなくなるということだ。
(もっとも、ドローダウンを覚悟の上の長期投資家には関係のない話だ。)
そう考えると、(短期のドローダウンでも問題視されうる)有力な投資家の中に株式保有割合を減らす動きがあるとのニュースが聞こえてきても合点がいくのである。