ジェレミー・シーゲル教授が、米国ほかでの大きな環境変化の中でも続いている株式の好調ぶりについてコメントしている。
正直言って、カオスな状況が行ったり来たりする中、概して株式が好調に上昇しているのが印象的だ。
シーゲル教授がウォートンビジネスラジオで、世界で高まる不確実性とは裏腹に株式が好調である点に注目している。
米新政権が始動し、良くも悪くも急激な政策変更が世界各国に波及する中、米市場は依然最高値を試し続けている。
「欧州株が大きく上昇したことにも触れるべきだろう。
理由の1つは、トランプ政権が努力しているウクライナにおけるある種の決着への希望が出てきたことだろう。」
米国がウクライナやガザについて戦闘を終結する方向で介入しようとしている。
そのやり方が当事者に受け入れられるか否かは別として、前政権では期待されされなかったこと、膠着状態から動きが見られることなどから、何か変化が起こるかもしれないと期待されているようだ。
シーゲル教授は、こうした新たな展開が投資に与えるインプリケーションを指摘する。
どうとう米国以外の地域でよいリターンが見え始めているということだ。
これら地域は、成長とPERで米国に後れを取ってきた。
これは私たちが信じる国際分散にとって良い兆候であり、今後も注視していきたい。
米市場について語ることの多いシーゲル教授だが、本来の主張である長期投資においては地域的分散も重要なポイントだと言い続けている。
教授がシニアエコノミストを務めるウィズダムツリーでは、2020年よりシーゲル-ウィズダムツリー・モデルポートフォリオと呼ぶ推奨ポートフォリオを公表してきた(モデルのスタートは2019年11月)。
主に自社ETFによるポートフォリオ組成を提案し、フィナンシャルプランナー向けのツールとなることを想定している。
これには3つのモデルがある:
- グローバル株式モデル: 株式100%。
- 長寿モデル: 株式75%、フィクストインカム25%。分散ポートフォリオだが、長寿リスクに対応するため株式を多めに。
- 平均的モデル: 株式60%、フィクストインカム40%。米国で伝統的な60:40モデル。
3つの主たる相違点は株式とフィクストインカムへの配分だ。
ポートフォリオ全体のうちの株式部分について参考にしたいなら、グローバル株式モデルを参照すればよい。
昨年3月末の開示による地域別配分は
国 | 配分(%) |
米国 | 64.0 |
その他 | 8.0 |
日本 | 5.2 |
英国 | 4.4 |
台湾 | 2.7 |
オーストラリア | 2.4 |
スイス | 2.0 |
フランス | 2.0 |
中国 | 1.7 |
ドイツ | 1.4 |
オランダ | 1.4 |
スペイン | 1.1 |
ブラジル | 1.1 |
スウェーデン | 1.0 |
イタリア | 0.9 |
インド | 0.8 |
米国株が1/3近くを占めている。
これは、MSCIオールカントリー・ワールド・インデックスと同程度。
シーゲル教授はバリュー・ファクターを選好するものの、地域別では米国に(強気でも弱気でも)バイアスをかけていないということだろう。
(ただし、米国以外の配分ではデコボコが見られ、日本株には少々強気バイアスがかかっているように見える。
また、投資対象のETFについて高配当株・小型株への強いバイアスがかけられている。)
近年では特に米市場のアウトパフォームが目立つため、地域的にバランスのとれたポートフォリオではS&P 500を大きくアンダーパフォームしていた。
今回、シーゲル教授が欧州株の好調を歓迎しているのは、過去がアンダーパフォームであっても、こうした分散ポートフォリオの重要性を信じるためだろう。
米国株2/3という偏りの中でパッシブな分散が成果を上げるのには限界があろうが、米国株が(パンデミックを除き)信じられないほど長い間強気相場を続ける中、こうした視点は重要だろう。