マークス氏の矛盾と深み
マークス氏の1つの魅力は、投資を突き詰めて考えていること。
結果、正当ないくつかの考えに一見矛盾があるように感じることがある。
たとえば、マークス氏は市場の効率性を重んじる一方で、市場はランダムだとも話す。
(実はこれらはニュートン力学と統計力学のようなもので、矛盾はしていない。)
マーケット・タイミングには多く期待できないと言いながら、市場サイクルを極めろと言う。
こうした点が聴衆を惑わすこともあるが、そうした一見矛盾に聞こえる点により深いメッセージが存在することも多い。
マークス氏は以前から、投資家としての成功の秘訣を積極性、タイミング、スキルだと言ってきた。
ところが、劣った投資家でも成功する者がいる点も認めている。
その理由を端的に解説する。
適切なタイミングで十分な積極性があれば、スキルはそれほど要らない。
これで1-2度は行けるだろうが、キャリアを通して繰り返しうまくやるにはスキルが必要だ。
何十年も運に頼ることはできない。
マーケット・タイミングか、市場サイクルか
マーケット・タイミングには多く期待できないと言いながら、市場サイクルを極めろと言ってきた点については、まず現実についてこう主張する。
実際、中央回帰や過剰の調整は、直線的推移の継続よりはるかに信頼性が高い。
つまり、将来を予想するなら線形補外ではなく周期関数の方が有用というのだ。
ただし、有用性には条件がある。
予想がより有用になる時期がある。
・・・市場がばからしいほど高かったり、ばからしいほど低い時、予想によって儲けることができると考えている。
唯一の問題は、そうしたチャンスがそうそうない点だ。
マークス氏は、過去50年でそうしたチャンスが5回しかなかったと認めている。
一方、現在は「中ほど」、「公正価格より少し上だが、そんなに高くない」と話す。
つまり、今は予想で稼ごうとすべきチャンスではないということだ。
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