レイ・ダリオ氏の新著『How Countries Go Broke』(国家はどのように破綻するか)の草稿から第15-16章を紹介。
第15章は国別のリスク度合いの定量化を行っている。
大項目は4つ: 政府債務、準備金、ほか健全性指標、準備通貨ステータス。
まとめの表では、大項目の下の小項目ごとに定量化された数字が並んでいる。
ダリオ氏は前3項目が劣る米国について次のように解説する:
読み取れるのは
米国は中央政府債務が極めて大きく(大きなリスク)
流動性のある預金/準備金が少ない(守りが小さい)が
通貨は基軸通貨(リスクを大きく軽減)であり
それが米国による多くの行動により傷ついている・・・
これらから、米国の財政健全性は、現在の準備通貨としてのステータスを維持できるかにかかっていることがわかる。
なるほど、他国通貨が安いと文句をつけながら、トランプ大統領がドル安誘導できないのももっともだ。
米政府はリスクの所在をよく理解しているのだろう。
一方、日本については似て非なる状態に見える:
読み取れるのは
日本政府はとても大きな債務を抱え(大きなリスク)
それが自国通貨建てであり(リスクを軽減)
比較的大きな外貨準備を有する(リスクを軽減)。
裏を返せば、日本国民が何らかの理由でホームカレンシーバイアスを解いたり、円買い介入で外貨準備を減らしていくような場合、「大きなリスク」だけが露呈することになるのだろう。
ダリオ氏はその後、米国の短期・長期での債務リスク、解決のための概案を提案している。
同氏によれば、米国の短期的な債務リスクは低いといい、理由を挙げている:
「インフレも経済成長も比較的適度な水準にあり
信用スプレッドは低く
実質金利は貸し手・債権者にとって十分に高く、かつ借り手・債務者にとって高すぎず
民間部門のI/S・B/Sは、中央政府の財政を支援する必要に迫られた場合に増税するのに十分に良好な状態にある。」
ただし、安心してはいけない。
逆に長期的な政府債務リスクは「極めて高い」という:
「政府債務と債務返済の現状と予想
過去最高となる国債の新規発行と借換
この先の大きな債務借換リスクの存在
がその理由だ。」
(次ページ: 被害は債権者に及び「死のスパイラル」に)