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米債務問題は引き返せない地点に近づいている:レイ・ダリオ
2025年2月14日

米国においては2022年からの急激な利上げがあり、現状のFF金利は4.25-4.50%と高い水準にある。
つまり、財政再建のためにも、あるいは次の景気後退のためにも、下げの余地が十分ある。
だから、ダリオ氏の唱える(財政引き締め+金融緩和)が可能になっている。


日本においては2013年に政府・日銀の共同声明(アコード)が結ばれた。
財政・金融政策ともに拡張的とすることで、景気刺激効果を倍増しようというものだった。
趣旨はすぐに理解されたが、心配に感じる人も多かった。
本来、経済安定化策では、財政と金融を逆方向に向けておくことが望ましいからだ。
両方を踏み込んでしまうと、いずれか一方でも戻そうとする時に補う方法がなくなってしまうためだ。
日本はそうした、いずれの政策も引き締められない状況が長く続いてきた。

もっとも、安倍政権もこの問題は十分に理解していたのだろう。
アベノミクスの第2の矢とされた財政政策は当初、初年度を除いてあまりふかされることがなかった。
結果、アベノミクスの効果は初年度で顕著だったが、その後は目覚ましいとまでは言えなかった。
しかしそれは、日銀も政府も、ダリオ氏が今唱えている(財政引き締め+金融緩和)を実行していたためかもしれない。
ところが、こうした軌道はバンでミック発生とともに大きく変化した。

日本では今、少なくとも声を大きくして目立っているのは財政ポピュリストとでも言うべき人たちだ。
そういう人たちが増えても、政府がそれになびいていないように見えるのは、声は上げないが危機感を持つ人もいるということだろう。
財政拡大と再建のどちらがよいかは別として、これは何らかのバランスが働いていることを示している。
また、日銀がバランスシートの縮小を進めることができない中でも利上げを進めているのも、こうしたバランスの1つの表れかもしれない。
日銀がある程度引き締めを進めれば、金利上昇にともない政治においても財政再建の必要性が理解され、その次に(財政引き締め+金融緩和)が選択肢に入ってくるかもしれない。
ただし、そうした可能性を考えた場合でも、米国と日本を比べた時、日本の状況の相対的悪さが感じられるのだ。

FPが以前から心配してきたシナリオは今も変わらない。
米国も日本も一歩間違えるとかなりつらい状況に陥りかねない。
米国がそうなる、あるいはそうならないよう解決策に着手すると、最大の対米債権国である日本が大きな被害を被る。
つまり、日本はこちら岸が燃えても、対岸が燃えても、いずれの場合もかなり厳しい状況に置かれるということだ。
今となっては、両岸ともに無傷でいられる確率はかなり下がってきたのではないか。

ただし、大災害がすぐにやってくると限らないのは、ダリオ氏が短期的リスクが小さいと述べているとおりだ。
(もちろん、リスクが小さいうちに対処に着手すべきなのは言うまでもない。)
こうした大きな警告はしばしば早すぎる警告になることが多いものだ。
すでに高齢ならさっさと安らかに成仏できるかもしれないし、若いならみんなでやり直すチャンスでもある。
個々人として考えうるのは、不幸にして長生きしすぎた時のために、適切な資産クラスにいくらかお金を置いておくことだろう。

レイ・ダリオ氏の新著『How Countries Go Broke』草稿

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