モルガン・スタンレーのセス・カーペンター氏が、英国の例との類似から、米財政の方向性とそれに対する市場の反応について語っている。
顧客との会話の中で、米国と英国の類似性が話題になることがある。
債務コストが現イールドカーブを変化させるにしたがい、米金利は着実に上昇している。
時間が経つにつれ、債務利払い費の対GDP比率は上昇を続けており、すぐに過去の史上最高を上回るだろう。
カーペンター氏が自社ポッドキャストで、米英の類似点を指摘している。
財政が悪化しているだけなら、それは米英だけの話ではない。
同氏が指摘する類似点とは、政治勢力の大きな変化があってから最初の予算を通すまでに時間がかかるという点だ。
英国では7月に労働党が14年ぶりに政権を奪取したが、新政権が予算案を提示したのは先月末だ。
大きな政治勢力の変化があってから、実際に財政がその変化を反映し始めるまで4か月近くかかったことになる。
米大統領選にも似たところがある。
11月上旬に政権交代が決まり、大統領から議会に予算教書が提示されるのが2月初め。
予算教書は次年度予算の編成方針を示す勧告であり、実際の予算決議案はその後議会が9月までにまとめることになる。
市場はこの間、最終的な到達点を予想しつつ、価格に織り込んでいくことになる。
カーペンター氏は、英国で起こったことを説明する。
信認を受けた政府は市場による試練を受けることとなった。
予算案の公表によって、金利(訳注:英国債と考えればよい)が大きく売られたのだ。
みんな予想していたはずのことが起こったのに、市場は織り込んでいなかったかのように改めて反応したのである。
予想されていたはずの財政悪化が改めて悪材料として認識され、結果、起こった金利上昇がその悪材料をさらに深刻なものとしたのである。
英予算案公表直後のReutersは、英国債市場の反応を次のように伝えている。
「31日の債券市場で英国債価格が前日に続き大きく下落した。
労働党政権が発表した大型の来年度予算がインフレ率を押し上げ、イングランド銀行(英中央銀行)の利下げペースが鈍化するとの見方が広がった。
リーブス財務相は30日、公共サービスの立て直しが必要だとして過去30年間で最大の増税計画を発表したほか、財源確保に向けて借り入れを増やす方針も明らかにした。」
過去30年で最大の増税案をアピールしても、英国債売りを防げなかったのだ。
カーペンター氏は「本当に債務対GDP比率を安定化させたいのなら、米国には財政再建が必要」と話している。
しかし、英国の例がある可能性を示唆している。
これらすべての事実を総合すると、米財政政策の見通しはかなりの間変化し続けるのだろう。
市場は、意外に長くインフレや金利の上昇懸念が金融政策や投資を揺さぶる展開を覚悟すべきなのかもしれない。