ブリッジウォーター・アソシエイツのグレッグ・ジェンセン氏が、「今やみんな重商主義者だ」と題する論文を投資家に送った。
この世界的な協力システムと堅固な組織・制度は、特に中国、さらに他の国々が程度の差こそあれ境界線を広げてくるにつれ崩壊してきた。
ドナルド・トランプ選出により、戦後の経済秩序は永遠に変わろうとしている。これは、疑似現代的な重商主義システムによって取って代わられるだろう。
ジェンセン氏が投資家向けメールで、戦後の新自由主義の終焉を予想した。
同氏は、自由貿易を求める国際社会から、各国政府による需要の奪い合いへと変貌したとの観察を述べている。
(植民地時代の重商主義とは少し異なり)「現代の重商主義」には4つの「教義」が存在するという:
- 国家が国富と国力の増大を指揮する。
- 貿易収支が国富と国力を決定し、貿易赤字は忌避される。
- 産業政策が自立と国防のために推進される。
- 国内のチャンピオン企業が保護される。
なるほど、現状をよく示しているし、自由貿易とも自由競争とも逆行するやり方のように聞こえてくる。
ジェンセン氏は、こうした「重商主義のイデオロギーは伝染する」と書いている。
どこかの国がやれば、他の国がやり返す。
中国の台頭が米国を追い詰め、自由の国が重商主義に傾けば、各国が同様のことをやるようになるというわけだ。
ジェンセン氏は、新たなレジームで起こるであろうことをいくつか予想している:
- 政府の政策が企業間の競争圧力を減じる。企業の成功についての市場の役割は低減する。
- 経済成長を貿易黒字に頼る国は最大のリスクを抱える。
- 貿易赤字国は貿易戦争において有利な立場に。
- 貿易戦争での報復手段は多様化・巧妙化する。
ジェンセン氏は、資本主義経済の本当の敵が明らかになりつつあると結んでいる。
資本主義者は長い間、社会主義がレーガン・サッチャー経済システムを終わらせるのではないかと心配してきた。
そうではなく、現代重商主義が(新自由主義に)最後の一撃を加えようとしている。
いまや私たちはみんな重商主義者となり、それが示唆するところは深く、不可避だ。
最近、心配していたことが現実になることが多くなってきたように感じられる。
世界がある種のブラックホールに囚われ、引き寄せられるような恐怖を感じるこの頃だ。
《韻を踏む》という意味で言えば、程度こそ違え、私たちは《戦前》に向かっているのかもしれない。
(もっとも、日本は明治開闢以来一貫してなるべく目立たぬように重商主義を続けてきた国なのだけれど。)
杞憂であることを祈ろう。