6月3日に新著発売を予定するレイ・ダリオ氏が、その第8章をプレビューとして自身のSNSで公開している。
以前の記事では経済面をクローズアップしたが、今回は政治面について一部紹介しよう。
「民主主義では選挙のサイクルがあり、経済状況が政治の変化につながるため、選挙サイクルは経済サイクルとざっくりいって一致する。」
ダリオ氏は、民主主義と経済にはサイクルがあり、両者が密接に関係していると指摘する。
選挙で新たなリーダーが生まれると、当初人々は好意的・寛容に向かい入れるが、徐々に選挙のためになされた「大きな約束」が果たされないことに落胆し、支持率を下げていくという。
「これが権力の座に留まるための戦いを激しくし、実現のために極端な行動がとられるようになる。」
なるほど、国を問わず広く見られる現象だ。
日本でも平成以降何度か政権交代があったが、末期的な政権が極端に走ったり、政権奪取を目指す野党が夢物語を語ることがあった。
こうした現象は、どこが与党になるかだけの話でなく、政治体制にも影響するらしい。
ダリオ氏は経済、選挙のサイクルとともに、政治体制自体のサイクルをも生むと述べる。
「国を統治する秩序はあるタイプからもう1つのタイプへと変遷する。
民主政治から専制政治、専制政治から民主政治といった具合だ。」
問題は、国の分断が進み社会に混乱が見える時期、どのように状況を打開するかであろう。
ダリオ氏は(価値観を含めず)淡々と過去の歴史からの示唆を伝えている。
民主主義には本質的に対立する者どうしの妥協が必要だが、こうした時期には妥協が機能しなくなるため、民主主義は問題を解決できなくなる。
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混乱の時代、金融・政治・軍事の力が法に勝り、弱く秩序のない集団主義より権威主義が機能することになる。
なんといやな観察だろう。
現在を分断と混乱の時代と見るなら、そこからの脱出には権威主義が必要となる可能性が高いことを暗示しているのだ。
さらに深刻なのは、専制政治や権威主義を誕生させるのが通常、民主主義であると指摘されていることだ。
国民の選択によって専制政治や権威主義が生み出されるというのだ。
ダリオ氏は、ほとんどの場合このプロセスが「民主主義のルールに乗っ取って起こり、数年、通常3-5年かけてどんどん極端なものになっていく」と述べている。
(次ページ: 分断と混乱の時代に起こりうる「想像しがたい」政策)