分断と混乱の時代とは内政だけにとどまる問題ではない。
しばしば外交・防衛でも変化が起こることになる。
ダリオ氏は、国際関係でも2つの状態の間を行き来するサイクルが存在すると話す。
「大きなサイクルの一部として、2つの状態の間で大きな振り子が振れる:
a) 自己の利益のための闘争、強者の弱者に対する勝利、弱肉強食と適者生存の法則がまかり通る単独行動主義
b) 世界的協調、平和的共存、平等主義を求める多国間主義。」
さらにダリオ氏は読者の心をくじくように過去の歴史の示唆を伝えている。
「歴史的に、多国間主義が機能するのは、戦後みんなが戦争を嫌い、秩序を強制する支配勢力が存在する時代だけだ。
実際のところ、歴史のほとんどで残忍で破壊的な単独行動主義が通常である。
協調・平和的共存・共通の善を求める多国間主義の時代の時代は極めて珍しく、持続しない。」
1980年代半ばのペレストロイカは冷戦を終わらせ(もちろん世界に戦争は絶えなかったが)そこそこ平和な時代が続いた。
完全ではないものの自由貿易の利点が共有され、私たちはグローバルで効率的なサプライチェーンの恩恵を受けてきた。
しかし、ダリオ氏の観察によれば、それも「珍し」い例だったようだ。
そして近年、それが反転し、当面続きそうに見えている。
ダリオ氏は苦境の時代しばしば「想像しがたい」政策が敷かれるという。
予想するわけではないと言いながらも、いくつか経済政策での事例を挙げている:
- 他国に国債の購入を強いる(英国)
- 国債の一部凍結、敵国資産の没収(米国での日系移民資産、近年のロシア資産)
- 債務デフォルト、リストラ、長期化、貨幣化(ヒットラー)
- 没収的税、資本/外為規制
- 「政府資産の評価替え・運用」
- 新通貨発行
未だ煙がくすぶるマールアラーゴ合意の話も含め、少し前なら笑われていたかもしれないシナリオが、今では可能性を無視できなくなってきているのかもしれない。