国内経済 政治

誰の話を聞くべきなのか?

アベノミクスや異次元緩和の際、出しに使われた学者が、日本の物価上昇に驚き、1ドル120円を望ましいドル円レートと指摘している。


日本経済は疑いようもなく過度な円高に苦しんでいた。
しかし、安ければ常にいいというわけではない。
1ドル152円前後の為替レートは単純に円安すぎる。

第2次安倍内閣で内閣官房参与を務めた浜田宏一イェール大学名誉教授がProject Syndicateで、現状の円安が行き過ぎであると指摘した。
過剰な円安が労働者不足、オーバーツーリズム、海外留学の妨げ、「危険なインフレ昂進リスク」上昇を生み出しているという。
かつては、利下げ、非不胎化介入、大規模量的緩和などによる円安誘導を主張した教授も、現在のドル円相場ではブレーキをかけるべきという。
1ドル120円前後が望ましいとして、直ちに「伝統的短期金利政策」を採用すべきと書いている。

状況が変わったのだから、言うことが変わるのは当たり前。
しかし、問題は《言うこと》の実現可能性だ。
残念ながら、話はそう簡単ではない。

長く続いたゼロ金利政策に加え、予期せぬパンデミックもあり、日本の財政規律はかつて予想できないほどに寛容になった。
そのことは先月の選挙での各党の主張でも明らかだ。
安倍首相の時代でさえ、政治ははるかに財政状況に気を使っていたが、今ではそれでは選挙で生き残れないような雰囲気だ。
これは、財政拡張に慣れ切り、依存を強めた国民自身の問題でもあろう。

いずれにせよ現時点で日本の財政が再建に向かうようには見えない。
慢性的に《経済が悪い》、《財政政策が必要》と言い続ける癖がつき、それに防衛費増額などが追い打ちをかける。
財政が悪化する中で利上げをするのは相当につらい。
異次元緩和開始前とは比べ物にならない難易度だろう。

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