ボブ・ルービン、ローレンス・サマーズ両元財務長官がブリッジウォーター・アソシエイツとの座談会で財政政策について語っている。
ルービン氏は財政再建を果たした1990年代繫栄の立役者、サマーズ氏はニューケインジアンだ。
「私は財政政策を、民間貯蓄と民間投資を推し進める構造的性質の文脈で考えている。」
サマーズ氏が、自身の財政政策についての信念を語っている。
単なるバラマキ好きとは一線を画したバランス感覚が特徴的だ。
経済が慢性的に民間投資より大きな民間貯蓄の過剰を生み出す危険があると思える時、たとえ超低金利であっても、かなり拡張的な財政政策が健全・適切だと考える。
(a) 超低金利はそれを持続可能とするから。
(b) ゼロ近傍の金利の経済は様々な金融不正、金融過剰、バブルを生みだしやすいので、拡張的財政政策が必要だから。
率直なところ(b)には首を捻るところもあるが、これが超低金利での天才の考え方だ。
しかし、もちろん時代はすでに変わった。
パンデミック以降の債務急増や実質金利上昇はサマーズ氏の結論を変え、今では財政悪化を心配する側に回らせている。
これはインフレ圧力、国債市場の大きな消化不能と財政混乱、価値ある民間投資の大きなクラウディングアウトのいずれかの形で発現することになろう。
一方、ルービン氏はより強く財政再建を求める考えだ。
第2次大戦終了時以来の財政悪化を「未知の領域」と危ぶんでいる。
同氏が心配するのは、パンデミック時のような必要な財政支出ではない。
2000-22年での政府債務拡大の45-50%は2011年と2017年の減税によるものと指摘した。
政府支出の中身から支出削減は難しいという。
解決策のほとんどは税の側にならざるをえないと思う。
それについての政治を考えると・・・とても難しい。
この状況からどう抜け出せるのかわからない。
かつて財務長官として財政再建を主導したルービン氏が、米財政悪化を警告する一方、実現性のある解決策を見出しにくいと吐露している。
その上で、解決に向かわない場合のリスクを語っている。
「この方向を進めば、あらゆる負の結末が起こりうる: 金利上昇、ドル相場での何か、国債市場の力学。
しかし、最終的には、政治が変わらない限り、大きく変わらない限り、ある種の金融危機のリスクに見舞われるだろう。」
おそらく誰もが知っているリスクだろう。
一方で、世界の市場はおおむね活況を祝っている。