スイス人著名投資家マーク・ファーバー氏が、現状を歴史上先例のないバブルだと主張し、インフレが不可避との見方を示した。
現在は歴史上先例のない資産バブルだ。
1981年以降、財政赤字と貨幣増発によって、債券・株式・コモディティ・不動産がとてもよい環境におかれてきたためだ。
ファーバー氏がWealthionのインタビューで、相変わらず自由闊達に発言した。
不適切なジョーク(?)で主要メディアから遠ざかって久しいが、その不規則発言はさらにエスカレートしたようだ。
(インタビュワー役のアントニー・スカラムッチ氏(第1次トランプ政権でスポークスパーソンへの就任が決まった後、就任前に解任された投資会社経営者)の冷静な態度と対照的なのが面白い。)
ファーバー氏はオーストリア学派のエコノミスト・投資家として有名であり、とにかく財政であれ金融であれ拡張的な政策は大嫌いだ。
したがって、経済刺激策が多用された半世紀、一貫してそうした政策を批判してきた。
さらに、政策に後押しされた資産価格上昇をバブルと呼んできた。
結論が見えているという意味では詰まらないところもあるが、たまに聞いておくのも悪くないかもしれない。
「最近・・・貨幣増発でも常には助けにならない事例があった。
過去5年間、貨幣増発がとても高い水準にあったのに、商業用不動産は大きく下落した。
みんな貨幣増発を根拠に株式を買っているが、結果はどの株を買うかによる。
・・・米国は強気相場の転機に差し掛かっており、私はこれを『トランプ天井』と呼んでいる。」
《終末博士》の面目躍如といったところだろう。
この種の発言で有用なのは、ファーバー氏の疑いが常にバリュエーションだけでなく企業利益にも向かっている点だ。
貨幣増発は企業利益を底上げすると指摘し、実績を鵜吞みにしたファンダメンタルズ分析は必ずしも正しい状況を示さないと示唆している。
ファーバー氏は貨幣増発(財政赤字にともなう国債増発と中央銀行による買い入れ・貨幣発行)を人類にとって不可避の潮流と考えている。
同氏は、中央銀行がバブル退治する可能性はないと主張する。
特に、億万長者で構成されるトランプ政権の間はありえないという。
歴史上のどの社会でも・・・インフレという安易な手段が選択される。
政治家が国民に増税を宣言するのには痛みがともなうが、インフレなら政府は公式に徴税する必要がないためだ。
・・・歳出引き締めを宣言するのにも痛みがともなう。
通常の意味での財政再建(増税や歳出削減)は結局国民からの票を得られず、最終的な財政立て直しはインフレによることになるとの歴史観である。
ファーバー氏は米住宅を例に、こうした立て直しの過程で国民の購買力が大きく奪われると指摘している。
財政再建は程度の差こそあれ国民を貧しくして政府を立て直すことであり、長年の放漫財政がいつかそうした財政再建をMustにするとの信念なのだろう。
長く双子の赤字に苦しみ、あるいはその恩恵を受けてきた米国だったが、パンデミック後の状況の悪化はさすがに国内外で心配されている。
今後の有望セクターについて視聴者から質問を受け、ファーバー氏は過去の日本市場を回顧している。
「1989年には日本市場は世界の株式時価総額の50%を占めていた。
この頃、私は日本が下落し、他の市場も引きずられると考えていた。
しかし、間違っていた。
日本市場は下落し、NASDAQが急騰した。」
つまり、世界のどこかの市場が崩落しても、必ずしも他市場を道連れにするとは限らないと言いたいのだ。
実際、日本ブームの後にも欧州や新興国でブームがあった。
これら市場が崩落した時、必ずしも世界中が運命を共にするわけではなかった。
そして最も反発力を備えた米市場について、今では米国例外主義を信じる人が多い。
ファーバー氏は、この米国例外主義を信じていない。
同氏は米市場が転換点を迎えているとし、躓いた場合、次の市場が上昇すると予想した:
- アジア: 中国、香港、東南アジア(インドネシア、タイ、ベトナム)
- 中南米: 割安
最後にファーバー氏のブラックすぎるジョークから:
もしもイスラエルが米国の助けでガザ地区を獲るなら。中国はこう主張してもいいはずだ:
どうして台湾、カンボジア、ラオス、タイを獲っちゃいけないの?