ジェレミー・シーゲル教授が、トランプ政権の関税交渉が米市場に及ぼしうる皮肉な効果について説明している。
「どうなるかがわかっていれば・・・それはある意味で確実性と言え、プラスでなくとも確実性があることになる。
4月2日についてわかっていないのは、欧州・メキシコ・カナダからの報復があるのか、これが『こっちのこの関税をやめるから、そっちのその関税をやめろ』という、長いプロセスを要する交渉の始まりになるのかだ。」
シーゲル教授がウォートンビジネスデイリーで、トランプ関税にかかわる不確実性が米市場の重しになっていると語った。
猶予期限の4月2日になっても、その不確実性が晴れない可能性があるという。
教授は、通商交渉が米国・米経済・米市場にプラスになると認めつつも、それには長い時間かかると心配している。
シーゲル教授は、他国の不公正な関税・非関税障壁を取り払う目的には賛同するものの、交渉の目的には誤解されている面もあると話している。
トランプ大統領は、貿易赤字が損失ではないことを理解していないようだ。
貿易とは、基本的には等価と思われる財とお金を交換する営みだ。
米国の貿易赤字が米国の損を意味するわけではない。
(それどころか、米国は基軸通貨を発行するだけで外国から財が買えるという意味で、むしろ相当に得しているようにも思える。)
シーゲル教授は最近WSJに寄稿した記事を引きつつ、貿易収支の均衡に潜む落とし穴にも言及した。
外国が財を米国に売って受け取ったドルは、米国の財を買うだけでなく、米国の資本を買うためにも使われる。
大統領は2点目のことを忘れているようだ。
これは米国の資本市場にとってプラスの影響を及ぼしている。
もしも貿易赤字をなくしてしまうと、間違いなく外国からの米資本への需要の源泉の1つをなくしてしまう。
だから、貿易収支を均衡させるのが最善との考え方は経済理論によって支持されない。
ほとんどありえないことだが、米国の貿易収支が大きく均衡に向かえば、外国人は全体として米資産の買い手にはなれなくなる。
これまで米資産価格を支持してきた柱の1つが剥落することになる。
それが実際に資産価格下落を引き起こせば、外国人は保有する米資産(ストック)を売り始めるかもしれない。
シーゲル教授は、米市場が現在直面する不確実性は関税だけではないという。
経済ではソフトデータ(心理・期待)が示す弱さが実際にハード・データ(実績)にも表れてくるのか、市場ではAI株やローテーションの動向など不確実性が高まっていると話す。
教授は聴衆に対し、これまでの成功体験を見直すべきと示唆している。
「すべての卵を1つのカゴに入れるだけで長い間それが大成功を収めてきた。
しかし、往々にして分散しておけばよかったと嘆く状況に陥ることがある。」
年内の景気後退入りの可能性について尋ねられると、シーゲル教授は、まだハードデータには表れていないものの確率は上昇したと話した。
ただし、悲観するほどでもないとのニュアンスだ。
資本主義世界ではいつでも15-20%の景気後退確率はあるものだ。
5-10%上昇したかといえばそうだろうが、50%超になったかといえば全くそうではない。