ジェレミー・シーゲル教授が、やや弱気に傾いた市場心理を取りなすかのように、少々強めのトーンで同じ話をしている。
ウォートンビジネスラジオで「教授の予想(弱めのスタート)どおりになった」と声をかけられ、シーゲル教授が話した。
「忘れてはいけないのは、金利がインフレだけでなく実質成長への期待にも依存していることだ。
実質成長率上昇は実質金利上昇になる。
10年物価連動債の示す実質金利は今や2.3%だ。」
このところ珍しく慎重な予想を繰り返したことを踏まえ、シーゲル教授は聴衆が過度に弱気に振れないようバランスを取ろうとしたのだろう。
シーゲル教授は金融政策や金利見通しについて、CNBC出演と同じ内容を述べている。
もしも長期金利が5.5%まで上がり、FRBが今年動かずFF金利が4.33%のままなら、健全で強く成長する経済にとって極めて正常な状態だ。
市場で高まりつつある長期金利上昇懸念を払拭したいのだろう。
シーゲル教授は従前から言及することの多かったVIX(いわゆる恐怖指数)についての考え方を今回詳しく説明している。
- 「私は高いVIXを将来の株式リターンへの強気と考えている。」プット・オプションが買われてVIXが上昇していると推測する。
- 弱気相場では40、50、60、それ以上にスパイク(一時的急騰)することが多い。
- 陶酔の水準は10-11。
- 現在の20前後のVIXは多くの警戒とヘッジがあることを示している。
VIXと株価変動の関係は様々な人が様々な時間軸で異なるトーンの話をすることがあるが、シーゲル教授の見方は市場の楽観と関連付けた解釈のようだ。
VIXが低い時は、市場に陶酔や油断があり、大きな下げになりやすい。
VIXが高いと、市場には警戒感が増しており、下げにくくなる。
(以前、VIXが20を超えると長期的に10-12に向けて回帰しやすくなると言っていた。)
VIXがすでに高く、その先低下に向かうなら、そこでは株価が上昇しやすい。
現在はすでに市場に警戒感があるから、大きな弱気相場の可能性は低いとの趣旨のようだ。
シーゲル教授はグロース株やAI関連株のトレンドやナラティブがまだ崩れていないとし、米経済と関連付けて語っている。
FRBはロンガーランのFF金利(中立金利の推定値とされる)を3%としているが、数年続いた現在のテック・ブームのうちは、中立金利はそれよりはるかに高いところにある。