ビル・グロス氏が、現在の米市場で1930年代と似たことが起こっていると語っている。
久しぶりに1930年代にスポットライトが当てられたのが興味深い。
『ギャンブルしてはいけない。
すべての貯蓄でいくつか良い株式を買い、上がるまで持ち続け、そして売りなさい。
上がらないのなら、買ってはいけない。』
グロス氏がXで、米国のマルチ・タレント、ウィル・ロジャーズ(1879-1935)の言葉を紹介している。
ウィル・ロジャーズはカウボーイ、サーカス芸人、俳優、ユーモア作家、コラムニストとして活躍し、多くの有名な言葉を残した。
上記の言葉については次のように解釈されることが多いようだ:
- ギャンブルはするな。
- 確信を持てる、よい株式銘柄を選べ。
- 投資は長期で。
しかし、どうやらその解釈は事実とは異なるようだ。
ポール・サミュエルソンが効率的市場仮説、ランダムウォーク仮説につながる論文を書いたのが1965年。
バンガード・グループの創始者ジョン・ボーグルがインデックス・ファンドを生み出したのが1976年。
したがって、ウィル・ロジャーズの推奨はインデックス投資ではない。
大きなプールに投資し平均を取れとは言わず、銘柄選別を徹底せよと説いている。
ここの解釈自体は間違っていない。
では、どこが違うのか。
上がるまで待て、上がらないなら買うな、の部分について、グロス氏はこう解説している:
これは無意味に聞こえるかもしれないが、実はこれは1930年代の『モメンタム投資』を支持する言葉だ。
モメンタム投資の流行は高まっており、ビットコインがその最たる例だ。
グロス氏によれば、ウィル・ロジャーズが言ったのは、ファンダメンタルズに基づく銘柄選別による長期投資ではなく、上がる株を買うモメンタム・トレーディングだというのだ。
勝ち馬に乗っかれば必ず儲かる、といった非現実的なメッセージだとの解釈なのである。
(どれが勝ち馬かを正確に予見できる者はいない。)
グロス氏は、多くの市場参加者が、株式もビットコインも待てば必ず儲かる投資先と信じ込んでいると主張しているのだ。
私はこの群衆心理を注視しつつ、このパーティが鈍化または終了するかもしれない状況を警戒している。
グロス氏の投資戦略に大きな変化は見られない。
パイプラインMLPや銀行株を選好しているという。
グロス氏は従前から慎重なスタンスを取っていたから驚きはない。
ただ、同氏が1930年代に言及したことは興味深い。
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