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2030年代半ばに債務が確実に問題に:ジェレミー・シーゲル
2024年5月20日

ジェレミー・シーゲル教授がウィズダムツリーと行った今月1日のウェブキャストが公表されている。
陳腐化していないテーマを2点紹介しよう。



1つ目の長期的テーマは米財政赤字と米国債、金利だ。
シーゲル教授は、中期的には心配は要らないと話している。

「今後数年の間に市場で(政府の)債務余力の問題が起こるとは考えていない。
私は債務問題を残念に思っているが、世界経済の80-100兆ドルのフローに対し1.5兆ドルは吸収できない金額ではないだろう。」

シーゲル教授はトランプ政権の当初の財政政策に賛同する一方、さらに財政赤字を増加させる政策については否定的なコメントを続けてきた。
パンデミックの際の財政出動についても、後半からはやりすぎと批判してきた。
教授は、その副作用が問題化するまでもう少し時間があると言いたいようだ。

「2030年代半ばに債務対GDP比率が上昇を始め、確実に問題となる。
いずれにせよ、危機がありえないと言うのではない。
債券と財政赤字について現時点で危機になるとは考えていない。」

こうした時間軸での予想を共有する投資家に、シーゲル教授は取り組むべき資産クラスを提案している。

私が強調したいのは、財政赤字と財政赤字のマネタイズを心配する人は、実物資産と株式への投資がその万が一の事態に対する理想的なポジションになるということだ。

定性的な経験則で言えば、マイルドなインフレは株式にとって追い風になる。
インフレが昂進するにつれ、株価(特に実質株価)に悪影響が及ぶことになる。
長期投資を推奨するシーゲル教授が《インフレだから株式》と推奨するのを見ると、教授はインフレや「危機」のようなものが大きなものになるとは考えていないのだろう。

経験則に基づき外挿により米市場を予想する限り、米市場には上昇の長期予想しかありえない。
しかし、例えば、日本株は永遠に高みに上り続けると信じられた時期もあった。
また、シーゲル教授が言うように米債務が問題になるのなら、これはドル安要因だ。
(日本から見る場合、円安ドル安の要因が積み上がっていると考えるべきだろう。)

さて、2つ目の視点は、いわゆるバフェット指標(株式市場全体の時価総額 ÷ 名目GDP)の妥当性だ。
この数字が大きいことをもって、市場が割高とする論調がまま見られるが、これは日米問わない現象なのだろう。

シーゲル教授はあっさりと斬って捨てている。

「長い間言ってきたことだが、米国株価を米GDPと比較するのは正しくない。
米企業が海外で稼ぐ利益はどんどん増えている。
このため(バフェット指標の)トレンドは上昇している。」

この現象についてはFPでも何度か問題視してきた(下記リンクの1つ目が詳しい解説)。
そもそもウォーレン・バフェット氏は米企業の多国籍化が目覚ましくなった頃からこの概念を口にしなくなっている。
それでも未だにこの指標が使われるのは

  • 「バフェット」氏の名前を用いた箔付け、SEO
  • 結論(株高)の決まった議論のための材料探し

であろう。

詳しくは過去の記事をご参照のこと。
特に2つ目の記事は重要な視点を含んでいる。

【メモ】バフェット指標の限界
【輪郭】未解決の問題:国際分散投資は必要か?


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