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55-65歳の半分近くが老後資金ゼロの現実:ラリー・フィンク
2024年3月27日

ブラックロックのラリー・フィンク氏が「引退危機」への対処を提唱しているが、それが《いつか来た道》に聞こえて少々心配だ。


おそらく10年に一度米国は、政府・企業のリーダーが通常の業務を停止しなければならないほど大きな問題に直面するのだろう。
・・・私は2008年以降、住宅ローン危機から有害資産を巻き戻す方法を探さなければならなかった時に、それに出くわした。
もっと最近では、テック企業のCEOと連邦政府が共同で米国の半導体のサプライチェーンの脆弱性に対処した。
引退危機についても何か同様の対処が必要だ。

自らもベビーブーマーであるフィンク氏が年次の株主向け書簡で「引退危機」への対処の必要性を訴えた。
背景にはもちろん米社会の高齢化がある。
同氏は現状の厳しさを紹介している。

「米統計局による2022年の定期消費者財務調査によれば、55-65歳のアメリカ人の半分近くが個人年金、年金、個人退職勘定、401Kの残高がゼロだった。」

「米国には、農民、ギグウォーカー、レストラン従業員、個人事業主など確定拠出年金に加入できない人が57百万人も存在する。」

「でも、従業員年金に加入することのできる人だってどうだろう?
彼らもまたサポートを必要としている。」

引退後のための財産形成を促し、自動的かつ有利な制度を用意し、どうやって制度を使えばいいのかサポートしようという話だ。
もちろん、その目的のためにブラックロックのファンドを使ってほしいと考えているのだろう。

これは対岸の火事ではない。
日本でもほとんど貯蓄のないまま従来の退職年齢を迎える人は少なくない。
また、NISAやiDeCoなどの制度ができても、何にどう投資すればよいのかわからない人も多いはず。
うかつに狼たちの言うことを聞けば、大切な老後資金を失いかねないのだ。
多くの人が誰を信じればいいのか戸惑っているはずだ。

「引退危機」について日米のいずれが先を走っているかはわからない。
ただ、これに関するBloombergインタビューでは、別の問題だが関連もある政府の財政についても話が及んでいる。

「この統計について話すと、私は震えあがる。
2000年、米財政債務は8兆ドルだったが、今では34兆ドルだ。
つまり、23年で26兆ドル債務が増えた。」

これにも既視感がある。
日本の普通国債の場合2000年が368兆円、2023年が1,068兆円()となっている。
1970年頃、普通国債はほぼゼロだった。

インタビューは当然のこととしてインフラなど公共投資への民間資金活用に及んだ。
日本でもPFIなどで活用されているが、米国でも期待されている。
これを拡大すれば、滞りがちなインフラ等の整備が可能になるかもしれない。
(そして、もちろん投資会社にとってはインフラ・ファンド等の事業機会が広がることになる。)

この話題も、日本人には既視感のある話題だろう。
もしかしたら米国は日本といくらか似た道を歩くのではないかと心配してしまうところだ。

フィンク氏と同年齢のキャスターは、フィンク氏にブーマー世代の責任について尋ねている。

私たちは素晴らしい経済の時代に生まれた。
私たち全員に、この環境を孫たちに再創造する責任があり、子供たちによい結果を生み出したいと考えている。
でも現在、私たちの年齢では、孫たちの将来に集中せざるをえない。

子供の世代には間に合わないかもしれないが、孫にはいい環境を渡してあげたいという。
悪意があったわけではないが、世代間に損得ができてしまった時、それを償うのは難しい。
この点には日本人もあまり既視感がないのかもしれない。
しかし、この既視感のないトピックこそ、問題に正面から向かう原動力となるものだ。

新型NISAが始まって、米国株インデックスやオールカントリー・インデックス(米国のウェイトが大きい)のファンドが流行りだという。
米国が抱えた問題の多くについて日本人は既視感を感じるはずだ。
それでも米国ですか?
日本ですか?
やはり分散は重要だ。


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