ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、内戦・国際的戦争に発展する可能性が高まっていると警告し、投資へのインプリケーションを書いている。
私が、私たちは内戦、国際的戦争の瀬戸際にあると信じる、という時、必ずしもそうなる、仮にそうなるならすぐになる、というわけではない。
ダリオ氏が自身のSNSで「第6段階」への進展を危惧している。
第6段階とは、同氏が考える「大きなサイクル」の最終段階にあたる。
6つの段階を復習しておこう:
- 第1段階: a) 戦後に新たな秩序が始まり、b) 新たな指導力が力を集め、c) 債務がリストラまたは貨幣化されて債務負担が減り、d) 富の格差とそれを巡る対立が減り、・・・
- 第2段階: さらに力が集中し、資源配分のシステムが組み上げられ、・・・
- 第3段階: 平和と繁栄が訪れ、・・・
- 第4段階: 支出と債務が大きく過剰となり、富と政治の格差が広がり、・・・
- 第5段階: 悪い金融/経済危機が起こり、国内・国家間で肩を並べる有力な当事者間の対立が高まり、・・・
- 第6段階: 戦争が起こり、・・・
- 第1段階、第2段階等々へと続く。
ダリオ氏は、戦争になる可能性が高まっているとしながら、そうなると予想するわけではない。
ましてやそれを望むわけではなく、そうならないことを望んでいる。
しかし、可能性が高まっていると考える以上、それが投資家にどういう影響を及ぼしうるのかを、過去を紐解くことで示唆することが有益と考えている。
一言でいうなら、国家が経済・市場を徹底してコントロールする可能性だ。
取引や利益に対する大幅なコントロールを超えて、資産の売買や海外資産へのアクセスを大幅に制限し、一定以上の利益を全部没収する国もあった。
たとえば、多くの国が単純に株式市場を閉鎖し、多くの人が株式にしていた貯蓄にアクセスできなくなった。
勘違いしてはいけないのは、これは、政府が自国民に課した制限ということだ。
敵国への投資というわけではなく、自国民が自国に投資したものについても、制限がかけられることが珍しくなかった。
では、自分の資産に自由にアクセスができなくなるような時期、資産リターンはどうなるのか。
ダリオ氏は10年ごとの実質リターンを示し、大幅にマイナスとなるか、そうでなくても劣悪な実質リターンにとどまったと指摘する。
表を見る限り、大戦前後は振るわないように読めるし、戦後の敗戦国は悲惨だ。
今後の実質リターンは厳しいものになるということだろう。
ダリオ氏は、短期的な状況判断についても触れている。
債務が限界近くまで増価したことで、中央銀行は難しい二者択一を迫られている:
(債務が売られることによる)金利上昇を容認して資産価格・経済を押し下げるか、大量の貨幣を増発し債務性資産を買い入れることで貨幣の価値を減価させるか
こうしたトレードオフは最近の英国で顕著だったとし、日本ではさほど目立たなかったという。
日本の政府・日銀はトレードオフなど感じず、貨幣価値の減価を選択したためだろう。
日本のテレビでは、日本株は比較的堅調などと愚かなことをいう人も多い。
しかし、円安は確実に円建て資産の価値を減じている。