オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が10日、市場/マクロ予想・マーケットタイミングについての論考The Memo「体温を測る」を公表している。
至る所マークシズムが溢れており必見だ。
話は、マークス氏が人生において5回しか市場予想を語ったことがないという話から始まる。
50年のキャリアで2000年1月、2004年末から2007年半ば、2008年末、2012年3月、2020年3月の5回だけで、いずれも的中したという。
同氏によれば、この少なさこそがマーケット・タイマーでないことを示しているという。
市場予想を行い、それに基づいて投資するスタイルではないというわけだ。
5回だけなら当たるっしょ
筆者はここまで読んで少し意地悪な感想を持った。
そこまで厳選して予想するなら当たるだろうよ、といった感じだ。
しかし、当然ながら達人は承知の上なのだ。
「もしも50年で50回、いや500回、市場予想していたらどうなっていたろう?
定義からして、中間近くで判断していたはずだ。」
市場は少々中間から乖離しても、中央回帰せずにさらに乖離することがある。
マークス氏は、こうした状況での予想が一般に芳しくないと指摘している。
心理と実際のギャップ
マークス氏は、投資の成功がマクロ予想、企業レポート、学問によって得られるとは考えていない。
重要なのは「支配的な投資家心理」を理解することだという。
優れた投資実績とは、物事がどうなると考えられているか、と、実世界で実際にどうなるか、の差を利用することから得られる。
マークス氏はそのためのエッセンスを箇条書きにしている:
- パターン認識
- 「過剰と調整」から来るサイクルの理解
- 人々が楽観の極みに達する瞬間の見極め
- 極端な状況下で儲けるには順張りでなく逆張り
- 経済・市場は機械的に決まるのではなく投資家心理に左右される
- 自分の感情を抑えろ
- 非論理的な話が広く受け入れられていたら注視し行動しろ
マークス氏の5回の市場予想の最初は2000年。
同氏をして、そこまで経験を積むまで上記の極意を体得できなかったのだという。
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