ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が先月6日に収録したビデオから、中長期の経済・市場予想の部分を紹介しよう。
現在私たちは、愚かしいほど長いゼロ金利時代がもたらしたものを目の当たりにしている。
ゼロ金利はこんなたくさんの借金を可能にしたが、それが現在のはるかに高い金利水準でリファイナンスされており、リファイナンスされなければいけなくなっている。
これは間違いなく対処が必要な問題になる。
ガンドラック氏が、40年に及ぶ金利低下局面が反転しつつあると語っている。
借り換えの度に金利が安くなる時代から、借り換えの度に金利が高くなる時代への変化が訪れ、それが淘汰を呼ぶと示唆している。
従前からガンドラック氏は米経済についてコンセンサスより弱気の予想を続けてきた。
先月初旬の段階でも、景気後退が早ければ今年、遅くとも2年以内に到来すると予想していた。
そうなれば、金融政策はゼロ金利と量的緩和に逆戻りするという。
次の景気後退が来れば財政赤字は膨大となり、何か本当に劇的なことが起こるだろう。
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大きな財政赤字のため、米ドルが大いに苦戦するだろう。
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次の景気後退に対する反応は極めてインフレ的なものとなるだろう。
やれることは貨幣増発によるばら撒きだけだからだ。
過去数十年は景気後退と言えばデフレ的だった。
つまり、金融緩和が有効に働く景気後退だった。
仮にガンドラック氏の言うようにインフレ的になるなら、それはスタグフレーションのような状況になる。
景気刺激のため金融緩和を行えば、インフレの火に油を注ぐことになる。
これは通貨にとって悪材料だ。
ガンドラック氏は、景気後退に向け、当初金利が低下すると予想し、すでにそれは始まっていると指摘した。
さらに低下するかもしれないとも話している。
問題は、その先だ。
経済にマイナスのサインが出れば、みんな驚くだろうが、それに対する反応は債券利回りの上昇開始になるだろう。
とても大きく上昇する可能性がある。
長期金利は極めて高くなる可能性があり、短期金利はFRBの選択にしたがい操作されることになるだろう。
景気後退が現実になるタイミングで、長めの金利が上昇に転じるとの予想だ。
量的緩和を予想していながら、長期金利が上昇するとの大胆予想である。
しかも、上げ幅は大きくなり、FRBが低く保つであろう短期金利との差が大きくなると予想されている。
つまり、イールドカーブが立ち上がるというのだ。
私からすれば、これはシステム全体がある種リセットしなければならないことを意味している。
短期から長期まで極めて低い金利が維持されてきた時代から、長めのゾーンは高くなる時代に。
これに耐えられなくなる債務者も出てくるはずだ。
「米国は過去に戻ることはできず、前に進むしかない。
私には、それがどのようなものかはわからない。」
ガンドラック氏は、例えば政府の借金や負担の少なかった過去に戻ることはできないと考えているようだ。
難局を切り抜けるには、過去に戻るのでなく、新たな姿を模索する必要があるという。
「それがどのようなものかはわからない」と言いつつも、いくつもポイントを挙げている。
まさに社会の「リセット」と呼ぶにふさわしい幅と深さだ。
- 債務リストラ
- 規律回復のための通貨の再調整
- 制度の廃止と新たな信頼のおける制度制定: 税制、FRB、債務管理
国家が債務や通貨を増やす(つまり負債を増やす)時、その過程を生きた人たちは増えた財政支出の恩恵を受けることになる。
しかし、タイムラグをともない、財政を逼迫させ、インフレ圧力を生む。
被害を受けるのは次の世代になる。
64歳の債券王は、若者の怒りを痛烈に代弁している。
「若者たちは、ベビーブーマーが35歳以下の人たちの約8倍の政府支出の恩恵を得ていることに怒っている。
社会を運営していく上でバカげた方法だ。
将来のない人たちに投資したくはないだろう。
将来があり、将来を作り、将来そのものの人たちに投資したいはずだ。
80歳代の政治家がみんな当選し続けるなんて驚きじゃないか。」