ゴールドマン・サックスのクリスチャン・ミューラーグリスマン氏が、60/40ポートフォリオのヘッジに寄与する「驚くべき資産」クラスを提案している。
ある予期せぬ資産が現在、60/40ポートフォリオにとって最良のヘッジとなる可能性が高くなっている。
ミューラーグリスマン氏が自社YouTubeアカウントで、ある有効なヘッジ戦略を推奨している。
FP読者なら、この問題意識については容易に想像がつくだろう。
米投資家で一般的な株式60:債券40のポートフォリオは、株式と債券の値動きが逆相関になることを前提としている。
ところが、相関係数は変動し、時としてプラス(順相関)になってしまう。
ミューラーグリスマン氏は少し前まで相関係数がプラスだったこと、最近ゼロ近傍まで下がってきたことを紹介し、「まだしつこい高インフレのリスクがある」と指摘している。
インフレが思いのほかしつこく居座れば、株式にも債券にも悪影響が及ぶとの含意だろう。
同氏は、60/40ポートフォリオのリスクヘッジに資する資産クラスを紹介している。
この状況での1つのよいヘッジ手段は米ドルだろう。
《より高い米金利をより長く》の恩恵を受け、リスクオフとなれば資産間のシフトの恩恵を受ける。
FP読者の多くは《知ってた・・・》とこぼすところだろうか。
念のため、内外金利差とリスクオン/オフの2つの観点からバランス感覚を確認しておこう。
まず、金利差。
この話の始まりは金融相場的な環境を前提としているから、ドル金利上昇≒ドル債下落なら、米国株も下落しやすい。
一方、ドル金利上昇はドル買いの背中を押すかもしれない。
つまり、ドルがヘッジに役立っている。
次にリスクオン/オフ。
米ドルはリスクオン局面では米国を離れ新興国市場等に向かう傾向がある。
リスクオンで米国内で債券・株式に上昇圧力がかかる時、同時にドル売りの圧欲がかかりやすい。
つまり、ここでも逆相関になっている。
だから、株式と債券が順相関の時に、60/40ポートフォリオとドルが逆相関になり、ヘッジとして機能すると期待される。
FP読者の多くは《知ってた・・・》ことだ。
なぜなら、日本でも少し形が異なるが似たことが起こってきたからだ。
日米で似ているのは、両方とも(特に対新興国市場との)リスクマネー・フローにおいて資金の出し手になることが多いことだ。
逆に異なるのは、日本の金利の変動幅は極めて小さく、かつ実質金利がマイナス圏にとどまっていること。
そもそも債券投資は投資価値の破壊であり、かつ、債券と株式の相関を議論する意味が大きくないのである。
日本についていうなら、やはりある程度リスクオフの円高を意識できるのだろう。
株安となった場合にいくらか円高となり、それが日本株の実質的価値の下落をやや減じるということ。
その意味で、日本人にとっての円もまた少なくとも日本株に対するヘッジに寄与するかもしれない。
日本人にとってもアメリカ人にとっても、自国通貨買いは似たような効果が見込めるかもしれない。
しかし、それでも投資家は素直に喜べないのではないか。
いずれの場合も、リスクオンに備えて自国通貨へのエクスポージャーを濃くしておけという話だ。
これは分散投資なのか?
どちらを見ても財政等の行き詰まりが見える世界で、自国通貨に確信を持てる人は少なくなっているのではないか。