かつて債券王と呼ばれた老投資家が、引退後を株式市場で楽しんでいる。
根っからのトレーダーであり、ミーム株など怪しげな銘柄にも喜んで参戦している。
天才とは知能指数が高いか、あるいは、強気相場の間に株式市場に投資できる人のこと。
天才とはまたDJTのオプションをボラティリティが年250の時に売る勇気がある人のことだ。
グロス氏が28日ツイートした。
無謀としか見えないことをやる人を「天才」と呼んでいる。
A genius can have a high IQ or invest in the stock market during a bull market.
A genius can also be an investor with the courage to sell DJT options at a 250 annualized volatility.
— Bill Gross (@real_bill_gross) March 28, 2024
DJTとはトランプ元大統領のSNS企業とSPACが合併してできたTrump Media & Technology Group(合併後新会社)のティッカーシンボルだ。
(このあたりの熱狂については以前ジム・チャノス氏が注意を喚起していた。)
グロス氏は「4月に満期を迎えるプットとコールをそれぞれ売」り、「株価が45ドルと95ドルの間で推移することに賭け」たという(Bloomberg)。
おそらくオプション取引でいう「ストラングルの売り」のようなポジションを取ったのだろう。
株価がレンジ相場で収まれば、オプションの代金(プレミアム)を丸々ポケットできる。
ボラティリティが極めて大きいから、オプション・プレミアムも大きい。
そこを狙ったのだ。
もちろんオプションの売りには大きなリスクがある。
想定レンジを離れれば、際限なく損失が増えてしまう。
しかし、老投資家には「勇気」がある。
自分を「天才」だと確信しているのだ。
一方で、ボラティリティが大きいことは想定レンジの幅を大きくすることにも寄与している。
45-95ドルという極めて広いレンジに対し、DJTの28日終値は61.96ドルだ。
これまでの乱高下が今後も続くかが、このトレードの成否を分けることになる。
グロス氏がオプションを売るのは今回が初めてではない。
2021年にもGameStop株のインプライド・ボラティリティの高さに着目して、オプションを売却している。
やや苦戦したようだが、結果的には10百万ドル程度の勝ちで終わっている。
ずいぶん寄付・分与等で減ったとはいえ、グロス氏の個人資産は17億ドル(Forbes)
同氏の株式トレードは誤差の範囲というべき規模だ。
それでも、特にグロス氏の場合、楽しんでトレードしている様子がうかがわれる(自ら吹聴している)。
投資とは引退後も最高の趣味になるらしい。