オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏がリスクを取らないリスクを説き、バークシャー・ハザウェイの成功について分析している。
『リスクを取らないことは極度にリスクの高い戦略だ。』
マークス氏がMemoで、高名なチェスのチャンピオンの言葉を引用している。
チェスだけでなく、投資の世界でもリスクを取らないことがリスクを高めると言いたいのだ。
同氏は、効率市場のトレードオフが効いた環境での3つの選択肢を列挙する:
(a) リスクを回避し、リターンはわずか、またはなし
(b) ほどほどのリスクでそれに応じたほどほどのリターン
(c) 大きな利益を求めながら大きな恒久的損失の可能性を許容し、高水準の不確実性を取る
マークス氏は、投資家の現実を次のように書いている。
「ほとんどの投資家は(a)と、(b)のほとんどを実現できる。
投資での試練とは何らかの形の(c)を追いかけるところにある。」
高名で立派な投資家はたいへんだ。
(c)を追求しなければならない。
一般の投資家はそこまでは要らないのではないか。
ただし、インフレが現実のものとなったこともあり、(a)に閉じこもるのは「極度にリスクの高い戦略」なのだろう。
マークス氏はリスクテイクの重要さを説く。
十分なリスクを取らないことによるリスクは本当に現実のものだ。
リスクを回避した個人投資家は、生活費を支えるのに不十分なリターンしか得られないかもしれない。
リスクテイクが過小な職業的投資家は、顧客の期待やベンチマークについていけないかもしれない。
マークス氏は、投資で成功を収めるのに百戦百勝は必要ないとして、バークシャー・ハザウェイの成功の基礎を分析している。
私は、ウォーレンとチャーリーの偉大なパフォーマンスの理由は単純なことと考えている:
(a) きちんとした結果を収めたたくさんの投資、
(b) 比較的少数の大成功の投資に大きく投資し数十年保有、
(c) 比較的少数の大失敗の投資。
マークス氏は、誰も百戦百勝を期待すべきでないという。
なかなか考えさせられる話だ。
ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーでさえ、大成功だけを続けたわけではなく、それを期待すべきでもないという意見。
では、一般の投資家はどうすべきだろう。
例えば、世の中には仮想通貨、グロース株、勤務先のストックオプションなどで自身の能力・努力を超えるリターンを得た人も多いはずだ。
大きなお金を持って、そういう人たちはどうすべきだろう。
マークス氏は、原則の話として、投資家にリスクを取れと言っている。
では、二匹目のどじょうを狙うべきなのか。
優れた投資リターンの追及についての結論は単純だ:
リスクなしに儲けを期待すべきでないが、リスクを取るだけで儲かると期待すべきではない。
確実性を犠牲にしなければならないが、上手に(skillfully)、知的に、感情をコントロールした上で行われなければならない。
つまり、大前提としてスキル・知性・精神力が必要ということだろう。
このメッセージの原則はあくまで、リスクを取れ、という話だ。
投資家として是非ともスキル・知性・精神力を高めたいものだ。