ブラックストーンのジョー・ザイドル氏が、現在のAIブームに対する冷静な見方をレクチャーしている。
私たちは、次の景気サイクル以降におけるAIによる経済成長・生産性上昇の可能性を楽観している。
しかし、公開市場の投資家が新技術についてそれ自体より先回りするのはままあることだ。
ザイドル氏が自社サイトで、AIブームについて書いている。
常識的・現実的な見解であり、意地悪く言うなら「びっくり大予想」ではない。
上記2文が同氏の考えをよく表している。
「次の景気サイクル以降」が示唆するのは、AIが実際に経済に大きな影響を与えるのは目下のサイクルではないということ。
景気後退が来て、どん底になり、そこから次のサイクルが始まる。
AIが実際に効いてくるのはそのあたりからという話だろう。
(それでもザイドル氏は将来のAIのプラス効果を確信しているし、賛成する人も多いだろう。)
つまり、今の株式市場におけるAIブームは、AIの将来の成果の先回り・先取りにすぎないということだ。
2文目では、かりに実際の成果が先のものだとしても、株式市場では期待による株価上昇がありうると暗示している。
ただし、何でも乗ればいいというものではない。
しばしば市場の投機と技術の進歩の有形の実現との間にはラグがある。
1990年代のテックブームによる経済成長の最大の恩恵は、株価下落後に得られた。
1990年代後半のインターネット・ブームは実際に今に至るまで経済の生産性に寄与したのだろう。
一方、株式市場はバブル化し、2000年にピークを打ち、バブル崩壊し、プレーヤーの多くが消えていった。
バブル時にどの銘柄が生き残り、かつ、隆盛を保つか知ることは極めて難しかった。
各セグメントのリーダーでさえ凋落するものが少なくなかった。
ザイドル氏は、多分に漏れず「AIはバブルか?」とよく聞かれるのだという。
同氏は、代わりにより適切な質問を提案している。
『AIは長期にわたって実体経済にとってどういう意味があるのか?』
たとえば、多くの人にとって安心なことには、技術的前進が必ずしも雇用を犠牲にしないということだ。