モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏が、お得意の景気・市場サイクル論を解説している。
その内容からは、米市場が上昇しつつも心配も募らせている様子がうかがえる。
「株式相場は順調だが、中身を見るとそうでもない。
ディフェンシブ株がとても好調だ。
株式市場は、債券市場のメッセージに倣いつつある。
ハードランディングとは言わないが、経済成長は期待外れを続けている。」
ウィルソン氏がBloombergで米市場の現状を解説した。
同氏は以前から、市場が将来をよく予想し、それを織り込んでいると話しており、ディフェンシブ株に重点を取るよう奨めてきた。
そして、実際に5月以降、市場はそのとおりに動いてきた。
これは典型的なサイクル終期の現象だ。
ウィルソン氏は、米景気が「ソフトランディング」に向けた鈍化過程にあり、市場もそれに合わせて調整に向かうだろうと滲ませている。
4月まではAIブームが市場を牽引したが、AIによる生産性向上は短期的には実現しないとの見方が定着しつつある。
結果「AIブームが少し輝きを失った」という。
変わって5月からは、債券と正の相関にあるディフェンシブ株(公共・生活必需品・医療など)が選好されているという。
ここでクォリティ・グロースからクォリティ・ディフェンシブに市場の物色が変化したのだという。
注目はインフレから為替へ
ウィルソン氏は、FRBにとってインフレの問題は解決済みと話す。
一方で、別の問題が台頭したという。
「FRBはインフレを打ち負かした。
現在の問題は為替市場で、FRBが利下げを積極化すれば、ドル円の関係にストレスが加わる。」
8月上旬の円キャリーの巻き戻しとそれにともなう市場の混乱がFRBに新たな制約を課しているとの見方だ。
「当局はドル円について現在の安値142円、140円台を守ろうとするのでは。
仮に138-139円と130円台に入れば、他の市場にストレスが加わるだろう。」
FRBは利下げに踏み切ろうとしているが、大きな円高ドル安を招かないよう配慮する必要に迫られているとの意見だ。
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