オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏による「リスクの考え方」の第6回「リスクの特徴」: 直感に反するリスクの性質について。
興味深いことに、リスクは直感に反している。
オランダのある街で交通標識・信号・路面標示をすべて撤去するという実験が行われた。
事故発生率や致死率に何が起こったかと言うと、下がったんだ。
マークス氏が自社YouTubeアカウントで、直感に反する実験結果を紹介した。
理由は想像に難くない。
みんなより注意するようになったのだ。
マークス氏は、もう1つの例を紹介した。
日に日に登山用具が進歩し安全に寄与するようになっているが、遭難や死亡の数は低下しないという。
用具の進化が、リスクの多い登山を増やすためだという。
マークス氏はこれらからリスクの性質を抽出する。
ある行為のリスクは、その行為自体のみによるのではなく、重要なのは、参加者がそれをどう行うかによる。
・・・
リスクは投資家が思慮深く行動する時には低く、そうでない時に高い。
マークス氏は、リスクが直感に反すると繰り返す。
みんなが安全と思えばリスクは高まり、リスキーと思えば和らぐからだ。
この性質は、株式市場やマークス氏の主戦場であるディストレストの分野で顕著だ。
みんなが喜ぶ上昇相場でリスクは高まり、悲しむ下降相場でリスクは下がる。
多くの人はリスクを把握できていないのだ。
リスクは隠れていて、人を騙す。
損失は、リスクつまり損失の可能性が、よくないイベントと衝突した時に発生する。
ある投資が損失を出すとき、その原因となったリスクテイクは損失発生時より前に行われている。
つまり、リスクは損失よりはるか前から存在していたが、人々は必ずしもそれを把握できていない。
悪いことが起こると、リスキーな投資の一部が損失を発生させる。
潜在的な損失が現実のものとなるのである。
それが起こるまで、投資のリスク度が本格的に再検証されることはあまりない。
「ある投資がリスキーでありうる場合でも、よい環境の中であれば、長い間勝者のように見え続けるかもしれない。
長い間安全であるように見えるかもしれない。」
明示的には言わないものの、マークス氏が過去十数年の市場環境を念頭においているのは明らかだ。
言葉は悪いが、愚か者でも儲かる環境、いや概して愚か者ほど儲かるような環境・相場が続いた。
結果、損失の実現頻度は少なく、多くの人がリスクを過小評価しているかもしれない。
今後市場サイクルが転換するのなら、こうした可能性を忘れないことが重要だ。
損失の頻度が低いことが、投資を真実より安全に見せるかもしれない。
もちろん、それこそが完全にリスキーな結論だ。
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