ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、これまで日本に起こったことが米国でも起こりうると示唆している。
(米利下げが)25 bpか50 bpかというのは愚かな賭けで、そんなの大した違いじゃない。
・・・もっと大きな話を見失っている。
ダリオ氏ばBloombergで、最近の市場やメディアの関心事にダメ出しをした。
確かに、日頃から超長期サイクルや世界秩序の変遷を語っているダリオ氏、そして長期投資家にとっても、こうした話題は些末なことにすぎないのだろう。
「25 bp(の利下げ)が全体像から見れば正しいだろうが、住宅ローン(債務者)の観点から見ればよくない。
それを気にする人が多かったから50 bpになったのだろう。」
ダリオ氏は債務の超長期サイクルの観点から、インフレ懸念が去ったとは思っていない。
その大きなテーマから言えば、50 bpの利下げは過大だったと考えている。
でも、個人的利害から大きな利下げを望む人は多い。
そうしたことに影響された政策決定をダリオ氏は嘆いているのだ。
「そんなことは乗り越えていこう」と話を大きなテーマに引き戻した。
政府債務の増大、つまり財政悪化のもたらす未来の話だ。
同じことが日本で起こった。
もちろんデフォルトじゃない。・・・
でも、日本は実質金利を押し下げ、大きくマイナスにしなければならなかった。
債務の利払いのため、実質金利を大きくマイナスにしなければならなかった。
また、インフレ率上昇により通貨の価値を減価させ、名目成長率を・・・名目金利より高くしなければならなかった。
・・・だから(円)債券の保有はよくない。
日銀が財政従属を認めることはないだろう。
しかし、多くの人が財政従属を感じている。
日銀は主要中銀の中で極端に緩和バイアスを持つ中銀だ。
これを日本のデフレ経済のためとするのは欺瞞にすぎない。
とうの昔に継続的な物価下落は起こっていない。
世間は日銀の金融緩和の主目的を景気刺激とは考えておるまい。
主目的は円高防止であり、財政支援である。
しかし、そのいずれもが禁じ手とされているため、欺瞞が続いている。
仮に日銀に財政従属はないと考えるのなら、例えば政策金利を実質ベースでゼロとなるところまで利上げしてみるがいい。
たちまち日本の財政運営は座礁することになる。
これこそ、金融政策正常化が金融政策でなく財政再建によらざるをえない理由である。
ダリオ氏は日本を他山の石として、そうならないための道を模索する。
しかし、足元の現実は厳しい。
「誰も債務の政策について立ち向かおうとしない。
債務はマネタイズすることになる。」
赤字財政が続き、中央銀行が国債を買い入れるなら、それはまさに日本が歩いてきた道だ。
これが暗示するのは、日本円だけでなく米ドルにも減価のリスクが大いにあるということだろう。
恐れるべきは円高ドル安でも円安ドル高でもなく、円安ドル安かもしれない。