ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、中国が発表した大規模な金融・財政刺激策についてコメントした。
市場経済の歴史書において、マリオ・ドラギECB総裁(当時)が『必要なことは何でもやる』と言った週と並び称されうる大きな週となった。
もしも中国の政策決定者が必要なことを本当に実行するなら、公表された内容よりはるかに多くの政策が必要になるだろう。
ダリオ氏が9月30日付けの自身のSNSで、中国の刺激策についてコメントした。
2012年のドラギ氏の発言をきっかけに欧州債務危機は収束に向かった。
ダリオ氏は今回の中国の政策を評価しつつも、まだ始まったばかりと滲ませている。
特に評価する点として、市場や起業を後押ししている点、よい目的のための失敗は咎めないとしている点を挙げている。
ダリオ氏は中国の低迷と今回の刺激策について、過去世界の至るところで繰り返してきたサイクルの新たな一例、世界秩序の変化の1コマだと考えている。
金融・財政政策により経済を拡大させると、いつか債務過多となり限界がやってくる。
同氏によれば、そこからの脱出には「美しいデレバレッジ」が必要になる。
これはデフレ的政策とインフレ的政策の両方をバランスよく用い、インフレ率を許容範囲に収めつつ債務削減を行うことを指している。
a) 不良債務のリストラ(金融機関のゾンビ状態の解消)
b) 金利をインフレと名目成長率より引き下げる、それができない場合、債務を貨幣化して金利をインフレと名目成長率より引き下げ、債務の価値を小さくするために通貨安にする。
a)はデフレ圧力となり、b)はインフレ圧力となる。
これらをバランスしながら、債務を減らせというメッセージだ。
ダリオ氏は、このアプローチが外貨建て債務の少ない国にのみ可能と書いている。
外貨建て債務の多い国でやれば、諸外国から批判され、通貨危機を招くからだろう。
ダリオ氏は今回の中国の動きを評価する一方、まだ注視すべき段階と考えている。
「美しいデレバレッジ」の実行には困難がともなうためだ。
債務リストラの難しさ、税制改革・再分配効率化の必要性、高齢化など課題は多いという。
ダリオ氏は、市場への短期的インプリケーションについても言及している。
この政策は、現金を他の主要資産クラスより劣るパフォーマンスの資産クラスにする。
他の主要資産クラスではリフレによりパフォーマンスが向上する。
こうすることで「底値買い」や「アニマルスピリット」の再点火が始まる。
私たちは明らかに今それを目の当たりにしている。