海外経済 投資

手に負えない米国株市場:ジェレミー・シーゲル

ジェレミー・シーゲル教授が、米国株市場の強さに少々驚きながらも、強気予想を続けている。


「どう想像力を膨らませても労働市場は手に負えなくなるというほどではない。
何が手に負えないか?といえば、株式市場が手に負えない。」

シーゲル教授がウォートンビジネスラジオで新規失業保険申請件数に言及した。
教授は、労働市場について悪化を心配するほどではないとする一方、史上最高値を更新する米国株市場の強さには驚きを隠さない。
インフレ、雇用、消費者信頼感などで悪材料が出てきても、市場では「誰も気にしていない」という。

シーゲル教授は足元のVIX、いわゆる恐怖指数に言及している。

S&P500(赤、左)とVIX(青、右)
S&P500(赤、左)とVIX(青、右)

私は現在、みんな大いにヘッジを進めているのだと思う。
現時点のVIXは20.4だが、史上最高値の市場での20.4はとても珍しい。
悪いことが起これば通常市場の下押し圧力となるので、みんなプット・オプションを買ってヘッジしているのだろう。

相場が最高値圏で上昇を続けているにしては恐怖指数が高いとの指摘だ。
下げに備えてのプット購入がインプライド・ボラティリティを高めているとの考えだ。
《永遠のブル》は、強い市場の比較的高いVIXが株価にプラスだという。

もしもこの恐怖が消え、みんながタオルを投げて『今年の最高の上げの1つを見逃した』と言うなら、市場はもっと上げるだろう。
現在の市場は安くないのに、市場は驚くほど強い。

このあたりの説得力は、効く側の感受性にもよるだろう。
恐怖が消える可能性は十分にあるが、恐怖がつのる可能性もあろうからだ。
確かに米経済・市場の見通しは改善したが、相場とは上がるときには上がり、下がるときには下がるもの。
もっとも、米市場は上昇時期が下降時期よりはるかに長いから、上下を予想するなら上げを予想するのは自然なことだ。
(意地悪な言い方をするなら、米市場では上げ予想の価値は通常高くなく、本当に価値があるのは下げのタイミングを予見するところにある。)

シーゲル教授は、経済データが想定内で推移する場合の金融政策・金利の先行きについて概ね従前の予想を継続している。

  • 来年7月のFF金利先物は3.61%、現在の4.83%との差は25 bpの5回分
  • 1回分はヘッジ(短期債買い)によるバイアス分
  • 今後6回のFOMCのうち利下げ4回、お休み2回
  • 長期金利は従前予想どおり4.5%へ

つまり、市場予想のFF金利はシーゲル教授が考える中立金利近辺にあり、市場に過度な楽観はないと言いたいのだ。


-海外経済, 投資
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 本サイトでは、オンライン書店などのアフィリエイト・リンクを含むページがあります。 その他利用規約をご覧ください。