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【輪郭】コストがすべてだ!!
2024年12月20日

テレビ東京の経済番組で高名な経済学者が、19日に日銀から公表された「金融政策の多角的レビュー」について解説・コメントをしていた。(20日 浜町SCI)
レジームは変わったな、と思わせるトーンだった。


その学者とは東京大学の渡辺努教授。
期待形成や物価における第一人者だ。
教授は「有識者」の1人として今回のレビュー作成にも関わっている。
公表されたレビューについて「客観的」「うまく出来た」「立派なレビュー」などと高く評価していた。

渡辺教授は、このレビューが「反実仮想」(「『もし超金融緩和を実施しなかったら』を想定し経済学の手法を使って類推」すること)の手法を用いている点を説明。
超金融緩和にはGDPで約1.5%、CPIで約0.6%押し上げる効果があったとの結論を紹介している。
その一方で、レビューに込められた日銀の本音も推測している。
教授によれば、今後については日銀は非伝統的政策を積極的に使っていきたいとは思っていないという。
日銀は非伝統的政策について、あまり効きのよい政策だとは考えていないからだという。

短期でプラス、長期では疑問符が

これら解釈は、レビュー本文でも日銀自身により示唆されている。

大規模な金融緩和について効果と副作用を評価すると、金融市場や金融機関収益などの面で一定の副作用はあったものの、現時点においては、全体としてみれば、わが国経済に対してプラスの影響をもたらしたと考えられる。
ただし、今後、なお低下した状態にある国債市場の機能度の回復が進まない、あるいは大規模な金融緩和の副作用が遅れて顕在化するなど、マイナスの影響が大きくなる可能性には留意が必要である。

以降、ざっくりとした議論として、副作用等々の言葉をあえて《コスト》と読み替えていきたい。
日銀が言っているのは、大規模金融緩和の効果はこれまで発現したコストに対しては上回っているものの、今後さらにコストが発生すれば逆転しうる、という話だ。
だからこそ、今後コストがさらに発生し続けないよう、日銀は利上げを模索しているわけだ。

渡辺教授は、現在の日銀の意図を推測する:

  • 非伝統的政策をなるべく回避し、伝統的手法(政策金利)で対応したい。
  • 小幅のインフレを安定させつつ利上げを行いたい。
  • 利上げの趣旨は、この先の不確実性(景気悪化など)に対する「予備的な準備」として、将来の利下げ余地を持っておくこと。

こうした推測に基づき、渡辺教授は、日銀の今後を予想する:

金利を上げて景気悪化に備えるのはわかるが、金利を上げればコストが生じ、コストとの天秤になる。
高めの金利という防潮堤を作るのは正しい方法だが、そのコストに日本経済が耐えられるのかが問われており、昨日利上げができなかったのもそこに関係している。
来年についても利上げができるかはそこにかかっている。
・・・両天秤の中で日銀は苦しむことになるだろう。

今回印象的だったのは、渡辺教授がこうした方向性に対し肯定も否定もしていない点だ。
ディスインフレの時代、教授はリフレ派、正確に言うと《理に適ったリフレ派》の急先鋒だった。
インフレ期待を高め、インフレ率を高めるために全力を尽くすべきとの論調が目立った。
しかし、それももはや過去の風景となっている。
文脈を追う限り、利上げに否定的なのではとも受け取れるが、つとめて明言を避けている印象だ。

(次ページ: 政策のコストの定義で答えが変わる)


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