BNPパリバの河野龍太郎氏が財界ONLINEに「BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎が指摘『日本版ポピュリズム政党の台頭の背景』」と題するコラムを書いている。
単純明快な論理で、いくつか重要なファクトも紹介されているから一読をお奨めする。
ここでは最後の段落のみを紹介しよう。
有権者に響いたのは、手取りを増やすとした国民民主だった。
自公政権は国民民主の政策を受け入れ始めている。
ただ、人手不足が深刻化し、完全雇用に近い中で、大規模財政を続けると、インフレが加速する。
困窮者に的を絞った政策が大切だろう。
コラムのタイトルとこの段落を併せて考えると、河野氏は国民民主党を台頭した「日本版ポピュリズム政党」と考えているのだろう。
その通りだと思う。
重要なのは「人手不足が深刻化し、完全雇用に近い中で、大規模財政を続けると、インフレが加速する」というくだり。
ほぼすべての政策にはコストがともなう。
手取りを増やすという政策にもしかり。
短期でも長期でも回りまわって誰かが負担することになるのだろう。
手取りを増やすこと自体は大きなメリットだろうが、そのコストは誰が負担するのか。
財源がセットにならない場合、それがはっきりしない。
しかも、単純に扶養者・被扶養者にメリットを与えるような形だと、短期的にも高所得者にメリットが大きくなりかねない。
河野氏が「的を絞った政策」を唱えるのは、そのあたりへの配慮だと読める。
現在進行中のインフレや高い物価は、日銀や政府が議論するインフレ率とは比べ物にならないほど庶民を傷めつけている。
庶民が実感するインフレ率は2-3%といったレベルではないし、仮にインフレが収まっても上昇した物価水準が再びかつてのように低くなるわけでもない。
苦しくて耐えきれない中で、ある者は理解せず、ある者は理解した上で、ポピュリズムを支持することになる。
ポピュリズム的な政策が結局格差拡大につながるとしても、今を生きるために構ってはいられない。
とにかく助けてほしいという思いなのだろう。
そして、内心そういう動きを自身の利益につなげようという輩も少なくないのだろう。
「的を絞った政策」が重要という話は、これまでFPも主張してきたところだ。
しかし、状況は新たな段階に進んだのではと思わせるところもある。
つまり、以降のFPの結論は、河野氏の結論とは少し異なる。
日本は今後、強い者が弱い者を切り捨てる段階に進むのではないか。
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